G型L型区分の大きな誤解と間違い

大石 哲之

G型L型については、やたらと議論が多い。そして殆どは噛み合ってない。

多くの反論が、L型を舐めるな、みたなものだが、これは、L型が何を指すかについて正確に理解していない誤解からくるものだろう。

実際私のツイッターにくるリプライも、多くがL型について誤解しているものだった。

たとえば、地方の酒蔵の高品質な日本酒。地方だし、日本の文化だし、これがL型だと思っている。そして、こういうL型をグローバルに広げるとか、L型を守ろうみたいな話の展開になる。

日本文化のL型を守ろう、である。

つまり、グローバルなiPhoneとかではない、ニッチ分野とか、職人芸とか、日本の文化や伝統芸能とか、和食やおもてなしも、里山文化も、京都の仏閣までぜんぶまとめて、なんとなしにL型といっているようだ。

これは、とんでもない誤解である。日本酒を世界に売るというのは、ニッチ分野ながらG型の輸出産業そのものだ。

冨山氏がいっているL型とは、医療や、介護、飲食店、タクシー、コンビニ、スーパーマーケット、交通や、地域の銀行など、地域密着で提供、消費される、生活基盤・インフラサービスのことをいう。

サービスを対面で、その場所で提供しないと成り立たない産業で、生産者も消費者もその場所でおこなうたぐいのものだ。当然業種としてはサービス業になる。

日本酒の輸出は、日本で製造し、北米やヨーロッパに売るので、生産地も消費地も違う。これは立派な輸出型の製造業だ。

製造業をふくめて、G型の産業は、顧客は世界中のひとで、競合も世界中の会社であり、世界の最適な場所で生産する。自由に世界のもっとも最適なところで最適なことをおこなう企業だ。(そうでないと勝てない)。

これにはトヨタなどの大企業が多いが、ニッチ分野の企業も含める。たとえば、特殊な鏡面加工技術をもっていて、世界中の光学機器メーカーがその部品を購入し世界シェア1位みたいな企業だ。これはG型企業であり、グローバルの市場の競争のなかで、ニッチ戦略で戦っている。

L型の産業とは、そうではない。地域の病院や、介護施設、街の食堂や、結婚式場、ホテル、温泉施設、工務店や電気工事、電車や路線バスみたいなものだ。バスの製造(G型産業)は中国でできるが、バスを走らせる(L型)は地域で走らせて住民を乗せなくては、意味が無い。こういう産業をL型といっている。市場がグローバルに統一されておらず、分散的に各地域に存在する。これは分散型の市場と呼ぶ。

具体的な職業で示せば、医師、看護師、介護士、調理人、バーテンダー、スナックのママ、バス運転手、ホテルマン、レジ係、マッサージ師、ブライダルコンサルタント、大工、電気工事士、地銀の銀行員などがそれに当たる。

なので、L型から世界に飛び立てとか、L型のイノベーションとかいう言葉は違和感がある。効率的なL型は存在するが、そもそもL型はどこにでもある生活基盤を担う産業なのだ。

G型経済ではは、ますますグローバルな単一マーケットでの競争になっていく。会社は最適値をもとめて、最適な人材と、最も安い雇用をつかって生産してくだろうし、高付加価値型の産業はもっとも人材の手に入る場所に集積するだろう。それを巡って、いろんな場所に流転する。

G型 = グローバル市場 = 人材はハイパーノマド

L型は、その場所でしかサービスできないものだ。だから、効率がわるかろうが、なんだろうが、例えば、ヤブ医者でも、その地域に医者がひとりしかいなければ、成り立つ。対面サービスなので、ラストワンマイルジョブと私はいっている。

L型 = 地元密着市場 = ラストワンマイルジョブ人材

ということ。

とにかく、その産業の消費者と提供が、世界中で移動できるならG型、消費者も生産者も地域密着で移動・越境が不可能なものをL型と考えると、ほぼ間違いない。