「消費」は増えるのか(その1) --- 岡本 裕明

2014年12月03日 11:11

ギッフェン財という言葉をご存じの方はあまりいらっしゃらないと思います。マスコミやニュースソースにもあまりお目見えしない言葉です。

イギリスの経済学者、ロバート・ギッフェン氏のこの理論を一言でいうと、「収入の少ない家計がより多く必要とする劣等財であるために、価格の上昇に対して需要量が増加する財、または価格の下落に対して需要量が減少する財のこと」(ウィキ)となります。分かりにくいですね。


例えば日本で輸入物価の上昇に伴いマーガリンも価格が上昇したとします。他の物価もどんどん上ったためバターは買えないけれどパンにつけるマーガリンぐらいは確保したいのでやむを得ず、価格の上がったマーガリンの購入を増やす家庭が増加するとします。これはマーガリン全体の需要が増えることになるのでこのことをギッフェン財と言います。一般にはマーガリンはバターの劣等財であり、昔はバターを使っていたのに所得が落ちてマーガリンに落としていることが前提になっています。

経済学的にはこのギッフェン財は証明されていません。あるのかないのか、分かりません。が、今の日本にはひょっとするとこの理論に当てはまるものがあるのかもしれません。

ちなみに日経ビジネスによると街角景気ではマーガリンが売れているそうです。

代替財という意味で「正常財」、「劣等財」の発想は世の中にごまんとあります。
ラーメン屋のラーメンとインスタントラーメン
レストランの食事とコンビニの弁当
自動車とオートバイと自転車
新幹線と高速バス
ビールと発泡酒
などなど

お腹が空けば何かを食べたいと思うのは人間でも動物でも同じ。ただ、その食べたいものが経済的にゲットできなければやむを得ず安いもので代替させるのは誰でも同じでしょう。早く行きたいけれどお金がないからヒッチハイクするという学生は今でもいるのでしょうか? 私の同級生の娘がバンクーバーに1週間遊びに来るにあたり、宿泊に対する予算が1万円と連絡がありました。それも「1日じゃなくて1週間で」と言われ、愕然としています。

アメリカのリーマン・ショック後、私はこのブログである予言をしました。「アメリカの100均は伸びる」と。どうですか、ダラーツリーなどアメリカの大手100均は大きく業績を伸ばしました。

人間には消費癖がつくとそれを忘れらなくなる癖があります。確か、経済学的にも理論があるはずです。今でもバブル時代の人を「大量消費の世代」とか「日本の消費を主導する層」とか言われるのはその消費スタイルがいつまでたっても変わらないからです。

では、団塊ジュニアが世代を主導する時代になったらどうなるのでしょうか? 「歌を忘れたカナリア」のごとく、「徹底選別消費の団塊ジュニア」は「消費を忘れた世代」となるのでしょうか? これは残念ながらほぼ確実と思われます。幼少期の癖は抜けません。つまり、今から20-30年後は消費に対する目はより一層厳しくなると言わざるを得ません。

問題はそれでも生きていけるという事でしょう。但し、日本の経済は大きく縮こまってしまいます。これはほぼ予見できる状況になっていますから小さくなる消費に対して抜本的に対策を取らないと大変なことになるのです。

カナダのモーゲージブローカーと話をしていていたところ、今年ほどコマーシャルモーゲージ(商業不動産ローン)がつきにくい年はなかったと嘆いています。銀行は更にコンサバになり、極端な話、街の場所でOKか否かが決まってしまうほどだというのです。ここBC州で5番目ぐらいの規模の街、カムループスで商業不動産の審査がまったく通らなかったその理由は銀行側が「どうせダメ」と審査の対象にすらしていないとのことでした。

いま日本で起きている消費に対するチャレンジは日本だけの問題ではなさそうです。ここ北米でも同じなのです。消費したい、だけどお金がない、ならばより安くゲットできるところに行く、という冒頭の劣後財で消費を楽しむスタイルに変わってきているのでしょうか? 最近、会員制のコストコの込み具合は特にひどいと思うのは北米の人にとってもお財布の紐は固くなり始めた証だと言えそうです。

学者も政治家も官僚も会社の経営者も共通するのは同じぐらいの世代であり、バブルを一定のかたちで享受してきたという事です。そしてその後の経済の激変は社会の認識を180度変えてしまったのに「いや、昔の様に戻ることが出来る」と強がってしまったことに原因があるとしたらどうでしょうか?

経済学ほどリライアビリティに欠ける学問はないと言われています。それは経済の予見の難しさでもあります。ケインズ経済学に基づき、財政支出を増やす、という発想は経済学の中の枠組みの中での選択肢であるのかもしれませんが永久不変にその論理が通用するかはいまだわかりません。

とすれば、今起きつつある経済、そして消費者マインドはかつての経済学では説明のつかない領域に入りつつある可能性も念頭に置いた方がよさそうな気がします。

この「『消費』は増えるか」は明日、もう少し続けさせてもらいたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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