ワシントン・ポスト紙の挑戦 --- 長谷川 良

2014年12月19日 00:12

独週刊誌シュピーゲル最新号(12月15日号)に興味深い記事が掲載されていた。米紙ワシントン・ポストの現状だ。オンライン通販の最大手アマゾン・コムのジェフ・ベゾス会長(Jeff Bezos)が昨年8月、2億5000万ドルを投入して同紙を買収した話は聞いていたが、同会長の下、ワシントン・ポスト紙がデジタル時代のメディアに生まれ変わるため死闘を繰り返しているというのだ。以下、シュピーゲル誌の記事を紹介する。


先ず、ワシントン・ポストの部数(月曜日から金曜日)の動向を見てみると、2000年は81万3000部あったが、04年77万3000部、08年67万3000部、12年46万7000部と年々減少し、今年は37万7000部まで後退した。2000年比で53.6%の急減だ。世界のメディアはどこでもデジタル時代の到来でプリント部数が激減し、生き残りに苦慮しているが、メディア界の雄、ワシントン・ポスト紙も例外ではないわけだ。

同紙は2003年以来、人材削減をくりかえし、これまで400人が解雇されている。ところが、オーナーがグラハム氏からアマゾン創業者のベゾス会長に交代して以来、ワシントン・ポスト内で大きな価値観の転換が進行中だ。同紙関係者は137年のワシントン・ポスト紙の歴史を、ベゾス氏就任前(Before Bezos、B・B)とベゾス氏就任後(After Bezos、A・B)に区分して呼んでいるほどだ。簡単にいえば、ワシントンDCを中心とした地方紙時代から読者を世界に広げたデジタル新聞への大転換だ。

ピューリッツァー賞を獲得した記者を多く抱え、ウォーターゲート事件ではリチャード・ニクソン米大統領を辞任(1974年8月)に追い込むなど、数多くのメディアとしての業績を誇るワシントン・ポスト紙だ。彼らはプリント紙の歴史に誇りを持っている。それだけに、価値観の転換は容易ではなかったはずだ。

ワシントン・ポスト紙は1996年6月にWebを開始。ニュース担当の責任者スティーブ・コル氏は2003年5月、インターネットはポストに大きなチャンスを与えると考え、ドン・グラハム会長(当時)に全国に読者を広げたデジタル新聞を打診しているが、グラハム会長は首都ワシントンDCのメディアに固執、インターネットを利用した全国紙化案を拒否している。

しかし、オンライン通販の最大手アマゾン・コム創業者が昨年夏、オーナーに就任したことで、ワシントンDCを超えて全国版デジタル新聞に乗り出す絶好の機会が到来したわけだ。具体的には、Websiteを強化し、Morning Mix、PostEverythingなどを始めた。今年9月段階でWebsiteのユーザー数は4700万人で、1年前に比べ47%急増している。

ワシントン・ポスト紙が首都ワシントンDCのメディアを脱皮し、全米で最も多くの国民に読まれるメディアに成長できるだろうか。アマゾン・コム—キンドル電子書簡ーワシントン・ポスト紙を掌握するベゾス会長の次の一手が注目される。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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