書評:クリエイティブ都市論 --- 中村 伊知哉

2015年01月12日 11:38


クリエイティブ都市論─創造性は居心地のよい場所を求める

リチャード・フロリダ著「クリエイティブ都市論」。人生で意味を持つものは「何を」「だれと」行うかに加え「どこで」=居住地が重要だといいます。


ふむ、と思ったポイントを5点列挙します。

1) 世界はフラット化しているのではなく、集積化している。クリエイティビティ、イノベーションの生産要素は特定の地域に偏り、集中している。先進国では人口の3/4が都市部に住んでいる。アメリカではGDPの9割以上を大都市圏が担う。

→スマートシティ=集積による都市再生は、交通・通信の発達による移動と交流の自由とのセット。ぼく自身、都市に住みつつ、移動の自由を確保するスタイルがしっくりきます。

2) 経済生産のメガ地域の首位は広域東京圏(2.5兆ドル)、2位はボストン/NY/DC圏(2.2兆ドル)。この2地域の規模はドイツ1国に匹敵する。「大阪(京都)名古屋」(1.4兆ドル)は5位。これら「地域」の経済生産は伊、加、印、韓、露らの「国」を上回る。

→東京圏の大きさは日本の強みです。いま改めて地方活性化政策が注目を集めていますが、それが東京圏の弱体化とのセットであるなら、考えなおしたほうがいいと思います。東京圏・大阪圏をいかに強化するか。そちらのほうが今日的なテーマではないでしょうか。

3) イノベーションを特許数に基いて測ると、最も突出するのが東京、NY、SF。続いてボストン、パリ、大阪など。

→ぼくが住んだのは東京、ボストン、パリ、大阪(京都)なので、ぼくは地方居住のメリットに鈍いのだろうと思います。地方活性化に力を入れるかたから、この本に対するコメントを聞いてみたいです。

4) 日本には広域札幌、広域東京、大阪名古屋、九州北部の4メガ地域があるが、その境界線が不明確で、世界初の統合されたスーパー・メガ地域=巨大な単一経済圏へ歩み始めているのかもしれない。

→本書は小規模地方都市の活性化より、4大都市圏の強化と、それらの連結を示唆しています。これも地方活性化政策を進めるかたからコメントを聞いてみたい。

5) ボヘミアン(芸術人)とゲイの人口集中と住宅価格にはかなりの相関が認められる。そうした人たちの環境への美的感覚、寛容性、文化的開放性が貢献していると考えられる。

→ボヘミアン集積はクールジャパン策でもあります。クリエイターのインバウンド政策。だけど、ゲイ優遇策が政策の俎上に載ったことはないですね。だれが提案するといいでしょう?

さて、都市論の専門家から「山手線の外側は地方であり、渋谷は東京ではない。むかしのように、そうなる。他方、軽井沢は東京都軽井沢区になる。」という話を聞きました。

平日は都心に下宿し、週末は世田谷や横浜の「地方」で過ごす。そんなスタイルだといいます。ぼく、けっこうあこがれます。

同時に、工場の中にオフィスを引っ越して、製造と情報処理を近接させる動きが増加しているそうです。オフィスワークがノマドでOKになって、デスクワークの自由度が高まりましたからね。現場とオフィスの一体化が進むとなると、逆にどこまでオフィスに人を集めて仕事させ続けるのかの設計が問われますね。

20~30年前に夢想した高度情報社会。いつでもどこでも仕事ができる社会。それは田舎で牧歌的に暮らしつつバリバリITで創造する夢想でした。でもその環境が実現した今、みんなのあこがれはそうではなく、都会で刺激ある日常を送りつつ、オン・オフをノマドにてきぱき切り替える姿のようです。いいと思います。
 
ところでこの本にSexPistolsの名前がちょくちょく出てくるのですが、それはどう受け止めておけばいいんでしょう。 以上


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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