独学の時代がやってきた

2015年01月14日 06:56

「独学の時代がやってきた」

毎日新聞1月13日夕刊の「特集ワイド」で、そんなタイトルの記事が掲載された。『東大教授が教える独学勉強法』著者の柳川範之東大経済学部教授の記事中コメントは以下の通り。

今年こそ何か学びたい! そんな思いで新年を迎えた人も多いのではないか。今、「独学」が注目されている。達人たちは「独学の時代がやってきた」とすら言う。本当なの?
(中略)
 柳川さんは「75歳まで働く時代はすぐそこです。もはや学生時代だけ皆と同じレールに乗って勉強すれば明るい未来が約束された高度成長時代とは違う。職務上必要なスキルや知識を学び直さないと、社会の変化に追いつけず、50代、60代で“社内失業”するかも、という危機感が広がっているのでは」と分析する。
 独学は、今の時代が求めている勉強法だという。好きな時期に好きなペースで学べる上、自分で考える癖がつくからだ。「インターネットで検索すれば何でも分かる時代には、博学なだけでは武器にならない。むしろ情報や知識を自分の中で熟成させ、加工するような能力が求められている」と柳川さん。
 また「独学に適した環境がこれほど整った時代はない」とも。インターネットを利用すれば、正規の学生でなくても米国のマサチューセッツ工科大やハーバード大などの講義だって無料で受けられる。 オンライン公開の無料講座を受講し、修了証も取得できる教育サービス「MOOC(ムーク)」が2012年に米国で始まり、日本でも昨春、「JMOOC(ジェイムーク)」としてスタート。今年春までに東大などの45講座が開講される見込みで、受講者は10代から80代まで10万人を突破した。


私もインタビューされ、どちらかというと独学の一例としての「英語の独学」についてのコメントが掲載された。以下はその抜粋。

 「以前は高額なリスニング教材を買うしかなかった。今はより充実した無料教材がネット上に転がっている。まさに独学天国です」。著書「YouTube英語勉強法」に詳しいが、動画投稿サイトには英語学習者のレベルに応じた学習素材が大量に投稿されている。「日本料理の作り方を英語で説明した動画や、外国人にはユニークに映る日本文化紹介の動画など内容自体が面白いので楽しんで勉強できる。最初は5分程度の短いものから始め、徐々に長いものを見る。最初からCNNに挑戦するから挫折するのです」
 また、本山さんは「学ぶ目的を明確にし、戦略を立てるべし。例えば留学が目的ならばリスニング力アップは急務だが、仕事に関する海外の情報を仕入れたいなら速読、多読力アップに特化した方が役に立つ。それも文学作品よりは自己啓発系のビジネス書の英語が取っつきやすい」と助言する。「漠然と『英語がペラペラになりたい』ではダメ」なのだ。
(中略)
 「独学の最大の敵は三日坊主」と本山さん。なにせ学校のように強制力がない。「楽しんで続けられる勉強法を選ぶことが大事。他人の合格体験記や経験談を読んで勉強法を調べれば、自分に合った方法が見つかる上、モチベーションも上がる」と勧める。
(中略)
「楽しむことを最優先して。自分の好きなことを好きなように学べるのが独学の醍醐味(だいごみ)なんですから」と本山さん。なんだか勇気がわいてきた。
 さあ、今年、何を学ぼうか。

YouTube英語勉強法
本山 勝寛
サンマーク出版
2014-06-20


私のコメントは、具体的なハウツーの部分しか掲載されていないので、背景の考え方を少し補足しておきたい。

私は、今、「教育」から「学び」の時代になってきていると思う。今までは、決められた時間に、決められた場所(学校)で、決められた教師から、決められた知識を伝達するという、「教える」ことが中心の「教育の時代」だった。これは産業革命とそれを担う労働者を輩出するための近代学校教育の発展によって定着してきたあり方だ。

しかし、技術発展のスピードが加速し、学校で教えられた知識では到底たちいかなくなり、教えられたこと以上に常に自らが学び続けなければいけない時代になっている。そして、ITの発展により、いつでも、どこでも、誰からでも、どんな内容でも学べる環境が整ってきた。柳川教授が指摘するように、「MOOC」の発展もしかり、初等・中等教育でもカーン・アカデミーがオンラインで分かりやすい授業を公開して話題となり、ビル・ゲイツが大規模支援に乗り出し注目を集めている。日本でも受験対策動画が無料または安値で提供され始め人気を博している。私が記事中で指摘したように、YouTubeやインターネット、アプリ等を活用して英語や他の語学を楽しく効果的に学ぶことができる。まさに「独学に適した環境がこれほど整った時代はない」わけで、「独学天国」だ。

そうなると、教える側を主体として知識伝達をデザインしてきた「教育の時代」から、学ぶ側を主体として学びをトータルにデザインする「学びの時代」へと大転換していかなければならない。これは、産業革命が近代学校教育をつくったのと同様に、情報革命が「学びの革命」をもたらすレベルのパラダイム・シフトであると感じるのだ。

「独学の時代」というのは、自らが主体的に学ぶという意味で、「学びの革命」の一面を表している。学びの時代に重要なのは、「好奇心」と「創造」であり、そのために学びのオープン化「開学」が必要であり、学びを楽しむことで好奇心と創造を引き出す「楽学」「遊学」が重要になり、学習者が主体となる「自学」(独学の発展型)が前提となる。私が、『YouTube英語勉強法』や『マンガ勉強法』といった著作を書いているのは、こういった問題意識からだ。


トーマス・フリードマンは『フラット化する世界』で、IQよりもCQ(好奇心指数)がもっと大きな意味を持つとし、「学ぶ方法を学ぶ」ことが重要だと説いたが、全く同感だ。新しい時代に、新しい学びのデザインが求められている。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。

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