私たちは最初、誰に感謝するか --- 長谷川 良

アゴラ

世界最大スポーツ・イベントと呼ばれる米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)第49回スーパーボウルが1日、アリゾナ州グレンデールのフェニックス大学スタジアムでアメリカン・カンファレンス(AFC)のペイトリオッツ(東地区1位)とナショナル・カンファレンス(NFC)のシーホークス(西地区1位)の間で行われ、ペイトリオッツが28対24で10年ぶり4度目の優勝を果たした。最優秀選手(MVP)にはQBブレイディが選ばれた。


欧州でスーパーボールをTV観戦しようと思えば、現地時間2日零時から早朝4時までTVの前に座っていなければならないが、そのハードルを潔く甘受して観戦するファンは少なくない。当方の息子もその一人だ。彼はTV観戦のためにピザなどを用意しながら、長時間の観戦を楽しんでいたが、当方は残念がら試合が終了した朝4時に目を覚まして息子に結果を聞くのが精いっぱいだった。

ところで、サッカーが大好きな欧州人は試合でさまざまな賭けをしながら楽しむファンがいる、彼らが参考にするのはブックメーカー(Bookmaker)のオッズ(倍率)だ。簡単な賭けでは、どちらが勝つか、最初のゴールは誰か、得点差はいくらか、などだ。もちろん、試合が開始してからでも賭けに参加できる。

例えば、プロ・テニスの全豪決勝戦で1日、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)がアンディ・マリー(英)を破り、全豪通算5勝目をあげたが、全豪決勝戦の倍率は、ジョコビッチが1・4、マリーが2・8だった。結果はジョコビッチが勝って、予想通りとなったわけだ。

スーパーボールの決勝戦ではブックメーカーはほぼ互角と予想していた。実際、決勝戦は伯仲し、ペイトリオッツがかろうじて逆転で優勝を飾った。息子曰く、「ブックメーカーの予想は非常にレベルが高い。専門家が詳細に分析した結果だからだ」という。

これまた息子から聞いた話だが、決勝戦でブックメーカーが面白い賭けを紹介していた。どのチームが勝つ、得点差ではなく、勝利したチームでMVPを獲得した選手が「最初、誰にその勝利を感謝するか」だ。倍率からみると、第1候補は「神」だ。次に、「誰にも感謝しない」、「ファン」「チームの同僚」、「コーチ」、「家族」、「奥さん」、下位には、「自分に」まであった。

欧米諸国はキリスト教社会ということもあって、活躍した選手が試合後、神やイエスに感謝を表明することが多い。サッカー試合でゴールを挙げた選手が「私はイエスを愛する」とユニフォームを見せて喜ぶ姿がよく見られたが、国際サッカー連盟(FIFA)が試合中、如何なる宗教的言動も禁止すると決めてからは、その姿をピッチ上でみる機会は無くなった。

ちなみに、ブックメーカーはスーパーボールのMVP選手ブレイディが最初に感謝を捧げる最有力候補者は「神」と予想していたが、実際は「家庭」だった。参考までに、テニス全豪優勝者のジョコビッチ選手は優勝直後のインタビューで、全豪主催者、コーチ、チーム、奥さん、そして全豪スポンサーまで几帳面に全てに感謝を表明していた。

人生で大きな実績や勝利を達成した時、私たちは最初、誰に感謝を捧げるだろうか。世俗化が急速に進む欧米社会だが、神に感謝を捧げる人が依然、最も多い。それ以外は家族であり、人生の伴侶の奥さんだ。日本人の私たちは最初、誰に感謝を捧げるだろうか。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。