経営の時間軸とプライベートエクイティの機能

2015年03月24日 11:30

ある会社が、事業再編の一環として、子会社の一つを売却する場合、その子会社株式を譲り受けることがプライベートエクイティの投資機会を作るのだが、企業金融の働きに着目すれば、これは売却側の企業の資金調達なのである。


プライベートエクイティ投資というと、普通は、出資先の企業への資金の供給が目的であるように思われる。しかし、子会社の譲り受けのような場合は、当該子会社へ資金が供給されるわけではない。資金は、売却した企業のほうに入るのである。

プライベートエクイティというのは、投資対象の議論である以前に、企業金融の一つの社会的機能なのである。しかも、常態におけるものではなくて、起業、事業再編、破綻と再生というような、通常の融資等の仕組みでは柔軟に対応できない状況における企業金融の機能なのである。

重要な点は、特殊な状況というところにある。より具体的にいうと、時間が読めない状況、あるいは時間の不確実性を許容できない状況なのである。これは、起業に一番典型的に現れる。起業の成功までの時間は、全くもって読めない。だから、エクイティの形態で資金供給を行うほかないのである。これが、ベンチャーキャピタルの機能である。

融資のような形態であれば、必ず有期であり、しかも利息もきちんと払われなければならない。期限を切られた資金が起業になじまないのは、自明である。だからエクイティなのだ。エクイティというのは、いわば、出世払いのような最も柔軟な資金の供給形態だということである。

故に、柔軟性さえ確保できれば、エクイティである必要はない、劣後融資のようなものでもいい。そこで、エクイティでないプライベートエクイティがあっても、一向に差し支えない。その意味で、プライベートエクイティとは、単なる非(未)公開株式ということではなくて、企業金融の一つの理念なのだ。

子会社の売却の例が、どうして時間の読めない状況における企業金融になるのか。それは、企業経営における事業再編の意思決定は、既になされており、早急に執行されなければならないからである。当該子会社が売却対象になったということは、経営が、中核事業として認定しなかったということ、撤退すべき事業と認定したということだ。次の問題は時間である。

事業再編は、中核事業への資源の集中を目的にしている。資源の集中である。だから、撤退すべき事業には、経営資源は投入できないはずである。つまり、撤退に時間をかけることは許されないということだ。故に、事業再編では、撤退する事業をプライベートエクイティのファンドに売却するのである。しかも、再編の意思決定後、直ちに。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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