長島昭久議員が目指すところの安保法制議論について

2015年03月24日 20:03


民主党の長島昭久衆議院議員(比例東京ブロック、衆議院外務委員会理事)が、「いま本当に必要な安保法制とは何か?」と題したブログをアップされています。


野党勢力は去年の選挙で敗れて以来すっかり萎縮してしまい、ひたすらに与党の敵失ばかりを期する悪しき「日本の野党」のステレオタイプから寸毫の成長も見られない情けない状態が恒常化していきそうな気配でしたので、あえて塹壕から頭を出し、「冷静で現実的な国会論戦の先頭に立って頑張って参ります」との決意を表明した長島議員の態度は賞賛に値するでしょう。

重要な安全保障政策を「八紘一宇」と「百人斬り」の政党に一任してしまうことに不安を感じるのは、私一人ではありますまい。

長島議員の勇気ある発言に水を差すと思われたくはないのですが、あえてその内容にコメントさせていただきます。

  • 「武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)にあたっては、現行法制の範囲内で関係省庁間の連携強化を図って対処する。」という与党方針に対して、「尖閣周辺や昨年の小笠原諸島で起こった大量密漁船事案でも明らかなように、現行制度の運用改善には限界があ」るとして、法制度の改善を求める第一の点はスィートスポットだと思います。

    「関係省庁間の連携強化」という美辞麗句に隠された「関係省庁間の縄張り争い」と責任転嫁を暴き、関係省庁の利害を超えたところでより効果的な「グレーな領海侵犯」対処の枠組みを提示する方向で、与野党間の建設的な議論に期待したい。尖閣問題では民主党の馬淵国土交通大臣(当時)がミソをつけた経緯もありますから、そうした失敗例に鑑みて、改善策を提案する余地は大いにあるでしょう。

  • しかし第二の「周辺事態法から地理的制約を撤廃」するという与党側の方針に対して、「我が国の存立とは直接関係のない「地球の裏側」での他国軍隊への後方支援にまでのめり込むことには国益の観点から再考を求めます。」という論の進め方はいただけません。

    いったい長島議員にとって「地球の裏側」とはどこから始まるのでしょうか。「すでに参加実績のあるPKOへの積極的関与は推進する」と言っておられますので、スーダンへのPKO参加はOKなのでしょうが、2013年のアルジェリア人質事件のような事態が例えばスーダンの向こう側、たとえばリビアやエジプト、サブ・サハラ・アフリカで出来した場合は、「地球の裏側」ということになるのでしょうか。

    「地球の裏側」は我が国の存立とは直接関係ない、などという21世紀にふさわしからぬ安易な議論の根拠づけには首をかしげさせられます。長島議員においては 在ペルー日本大使公邸占拠事件(1996年)なども「地球の裏側」になるのでしょうか。

    「周辺」事態法の地理的適用拡大を否定したいのであれば、「周辺」以外の地における事態に対処する法制度を提案すべきだと思います。

    民主党支持層の一部にアピールするために、漠然とした「平和主義」を標榜せねばならず、「地球の裏側での戦争に巻き込まれるな」などという左寄りのアジに対して譲歩しなければならない内部事情は察して余りありますが、恣意的な地理的制約を前面に押し出す論法は感心できません。

    長島議員は「今」という時代をどのように捉えているのでしょうか。イギリス国籍の狂信的イスラム教原理主義者が中東で人質となった日本人ジャーナリストをシリアの荒野で殺戮したビデオが世界中にリリースされる時代。西アフリカで猖獗を極めたエボラ・ウィルスが世界規模で拡散する兆しを見せ、それがグローバルな安全保障上の危機となりえる時代。イギリスの詩人、ジョン・ダンの「誰がために鐘は鳴る」ではありませんが、「何人も孤立した島ではない。いかなる人も大陸の一片であり、全体の一部である。」という宗教的啓示が現実のものとなりつつあるこの時代に、安全保障政策に地理的制約を加えようとすることの不当性が理解できぬ長島議員ではないでしょう。

  • 第三の「最大限国民の理解を得るべくより丁寧に時間をかけて国会審議を尽くすべき」という点は、お約束とはいえ主張なき主張であり、いささか腰の引けた印象です。

    腰が引けているということであれば、長島議員の発言の中で全く触れられていないのが、諸外国との防衛交流の問題です。すでに覚書を交わしたインドネシアをはじめ、インド、その他の国々との間で、防衛技術の協働開発への動きがあり、新設が予定される防衛装備庁、特に他国との交渉にあたることになる装備政策部は大忙しになりそうです。

    潜在・顕在を問わず、某国との間に領海・領域問題を抱えることにより利害を同じくする国々と、安全保障政策において協調していくことは正しい外交政策ではありますが、これらの国々のなかには政情不安を抱えた国も少なくなく、日本が提供した防衛技術がそれらの国・地域において国内反対勢力に向けて使用されるという事態が出来する可能性は否定できません。

    こうした状況下において、どのように国会が政府の行動を有効に監視しこれを制御していく枠組みを整えるのかという点は、もっと議論されて良いように思うのですが、長島議員がそれに触れていないことは残念です。

以上、簡単にではありますが、今後の論点として掘り下げてもらいたいトピックを私なりに列挙してみました。

「日本と世界の平和と発展」のためというよりは、個人自らの「あの世での救済」のために非現実的な平和主義を唱えている印象がある野党勢力において、あえて現実的な論戦を挑む長島議員への応援の意味をも込めて一筆啓上つかまつった次第です。

追記
以前のエントリーで紹介したローリィ・スチュアート氏が委員長を務める英国下院の軍事委員会の第10期レポートが発表されています。

現在英国が置かれた世界の状況分析をクリミア、ウクライナから書き起こし、結論として(1)NATOを通じた同盟諸国との協調と条約の下におけるGDP2%の防衛予算コミットメントの重要性の再確認、(2)冷戦終結以来衰退した通常兵器兵力の再構築、(3)サイバー攻撃などに対処する能力の開発、(4)欧州圏外での突発事態に対する即応体制の構築、以上を目標とし、このためにイラク・アフガニスタンでみられた長期にわたる治安維持活動のような作戦行動からは異なった用兵シフト(空母機動部隊の再編成を含む)を目指すべきだとしています。

日本の議員先生たちもこれぐらい踏み込んだ状況分析と政策提案ができるようになって、ようやく及第点であることを自覚してほしいものです。

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