ご当地ナンバーというのがあります。昨年から、東京では世田谷ナンバーや杉並ナンバーというのが生まれました。車のナンバー名称の変更よりも、もっと先にやって欲しいことがあります。
それは、駅名や地名の戦略的ネーミングです。
ご当地ナンバーは、エリアの知名度やブランド力を上げて、住民の満足度を高めるのが目的のようですが、思い通りにはなっていないようです。例えば、世田谷区民は品川ナンバーから世田谷ナンバーに変わる訳ですが、練馬ナンバーから変わって喜んでいるのとは対照的に、住民の評判は芳しくありません。訴訟沙汰にさえ、なっているようです。
理由は明確です。「杉並>練馬」ですが、「品川>世田谷」ですから、ブランド力が下がる、ご当地ナンバーへの変更はやめて欲しいと思うからです。
そんな、意味のないご当地ナンバーよりも、変更を真剣に検討して欲しいのは、駅名です。写真は東急の昔の路線図ですが、現在の学芸大学駅は碑文谷駅だったことがわかります。
東横線には学芸大学、都立大学という2つの学校名の駅がありますが、どちらにもその学校はありません。移転してしまって名前だけが残っているのです。
この界隈には、碑文谷、八雲、柿の木坂といった、古くからある地名が残っています。せっかくならご当地ナンバーのように、駅名も由緒ある名前に変更して欲しいと思うのです。
駅名だけではありません。地名に関しても同じです。
JR線の目黒から品川の界隈には、かつて大名屋敷があった城南五山と呼ばれる高級住宅地があります。島津山、池田山、御殿山、花房山、八ツ山と呼ばれた場所ですが、現在、島津山の住所は東五反田1・3丁目、池田山は東五反田4・5丁目、御殿山は北品川3~6丁目というように、地名は何とも味気ない名前になってしまっています。
町名変更にはコストや手間がかかることは、ご当地ナンバーと同じですが、東五反田が池田山に町名変更すれば、ブランド力の向上が期待できます。地価も上昇するでしょうし、固定資産税の税収のアップも期待できるのです。
いずれにしても、このようなネーミングを変更する場合、その目的と効果について戦略的な検討が必須です。お役所には、残念ながらそういった発想はありません。
世田谷ナンバーの導入がどのような経緯で進められたのかはわかりませんが、そこにブランディングという戦略がなかったことは事実です。
地名や駅名といったネーミングは、商品のネーミングと同じです。以前、抗菌作用のある靴下を「フレッシュライフ」というネーミングで売り出してさっぱり売れなかったのが、「通勤快足」と名前を変えただけでバカ売れしたことがありました。
渋谷駅の再開発の失敗で、ブランド価値の毀損が懸念されている東急東横線の起死回生の一案として、学芸大学→碑文谷、都立大学→柿の木坂、という駅名変更はどうでしょうか。短期的には負担増になっても、長期的な沿線ブランドの維持向上にはプラスだと思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。