ブロードバンド特別シンポジウム@日本プレスセンターに参加しました。「4K8K vs スマートTV」というパネル討論。日経新聞関口さん、NTT栗山さん、NHK桑原さん、ニコニコ動画杉本さん、NexTVフォーラム元橋さんという座組み。
ぼくにキツい質問がありました。この分野、エラそうなことを言うと、激しいツッコミが来るのですが、覚悟して答えました。
◯2020年、東京五輪で実現する高精細放送のイメージは?
→ぼくらのような年配のメディア行動は変わりますまい。
スマホ1stの若い世代が大画面をどう使うかでしょう。4K8Kのパブリックビューイングの前でスマホ片手に応援するニコ生的な絵図ならイメージできます。
◯4K8Kを推進するリーダーは?
→先導的な開発面でNHK、NTTに期待します。NHKは法改正でネット配信が「可能」になったとはいえ制約が多い。NTTにも放送局を買収する自由はない。国内事情で手足を縛っている間にGoogle、Appleに市場を持っていかれる状況です。
◯スマートテレビの展望は?
→スマートテレビというのは、20年前のマルチメディアと同様、次のメディアを待望する呪文のようなもの。マルチメディアブームの後に残ったPCとケータイとネットのように、次に実現して残ったテレビが、振り返るとスマートテレビと呼ばれることになるのでしょう。
4K8K+ネットの大画面シングルスクリーンとなるのか、スマホ/タブレット連動のダブルスクリーンとなるのかは未だ見えません。一つの像に収れんすることはないかもしれません。
◯伝送路はどうなる?
→ぼくがフォーラムの代表を務める「IPDC」は、放送波に通信プロトコルを乗せる電波一本のシステム。NHKハイブリッドキャストは放送波と通信網とを組み合わせる技術。いずれも放送から通信への攻勢で、使える伝送路をフル活用するものです。
そろそろオールIPを考える時期。通信も放送もIPで統合するシステム。NHKが通信サービスを行い、NTTが放送を行うことを考えていいのでしょう。
◯通信・放送融合は?
→昨年の放送法改正で一歩前進したというが、未だ2010年改正の成果が上がっていません。帯域免許や通信放送統合サービスが出現するような状況変化を期待します。
融合の議論は92年から続いているが、その動きが日本で遅いのは、放送ビジネスが好調だったからでしょう。それは幸せなことだったのですが、成功体験が足かせになっていると思います。
◯課題は?
→日本はインフラの充実度とユーザのネット利用力が高い。そのチャンスを活かしたい。制度面ではロードマップや電波圧縮方式の検討に加え、電波利用の一層の規制緩和が重要。
4K8KはB2Cよりも、デジタルサイネージや医療などB2Bが先でしょう。その先行市場を立ち上げる努力がほしい。
◯海外展開は?
→4K8KをB2Cで突っ込むとHDTVの二の舞いでしょう。クラウドやIoTなどを組み合わせたシステムで出て行くことを考えるのでは。
国内で成功してから海外という手順ではないとは思いますが、そうは言っても日本には、インフラや放送局の制作力、ニコ動に集うユーザ力などの強みがあります。その強みをテストベッドとして使ってほしいと考えます。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。