東京外国為替市場では昨日、「16時30分すぎに122円46銭近辺と5月26日以来、約2週間ぶりの高値を付け(中略)9~17時の円の安値は1ドル=124円63銭近辺で値幅は2円17銭程度と、日銀が追加緩和を決めた2014年10月31日以来の大きさ」でした。
之は同日午後、衆院財務金融委員会で日銀総裁の黒田東彦氏が「実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れることはありそうにない」と発言されての展開です。
先月22日イエレンFRB議長が「年内の利上げ開始を示唆すると一段安」となった円相場は、当ブログで一つの節目として此の年初に提示した07年6月のドル高値124円14銭を先月28日に抜け、先週金曜日には5月米雇用統計の強い内容を受けて125円86銭と02年6月以来13年ぶり安値を付けていたところでした。ドル円は此の2週間で5円以上も上昇していたのです。
為替にしても株式にしてもそうですが、相場というのにはよく行き過ぎることがあるものです。特に一つの強い抵抗ラインと考えられる水準を超えて後、上にも下にも大きく振れる可能性があります。
私は1974年に野村證券に入社して以来今日まで、日本経済も世界経済も良い事も悪い事も色々ありました。過去40年以上に亘って株式・債券・金利等の世界中のマーケットを見続けてきた私の経験から言えば、相場というものは大方の人が予想するようには動いては行かないのです。
今月5日の上記ドル円急騰の後7~8日に開催された「2015 G7エルマウ・サミット」閉幕後の記者会見でも、安倍晋三首相は「円安方向への動きに伴う輸入価格の上昇は、原材料コストの上昇等を通じて、中小・小規模事業者の方々や、地方経済、消費者の生活にも影響を及ぼし得るのも事実です。その影響もよく注視していきたいと思います」と述べられました。
あるいは今週月曜日、同サミットで米国「オバマ大統領がドル高は問題だと語ったとする報道」を発端として、「125円台半ばで推移していたドルの対円相場は、すぐに125円を割り込んだ」という動きも見られました。
このように円安のデメリット・ドル高のデメリットにつき各国要人が様々意識し始め随分発言するようなっているのが現況であり、彼らがそういうふうに意識し始めたらば昨日見られた類の行き過ぎに対する反動がまた起こってくるかもしれません。
黒田日銀総裁が今回言及された実質実効レートはと言うと、「最近の安値は対ドルの月中平均相場が1ドル=119円29銭だった昨年12月の69.2で、同1ドル=301円93銭だった1973年1月の68.88に肉薄して」おり、今年に入っては「70台に戻しているものの、依然として低いまま」です。
此の実質実効レートから言えば「歴史的超円安」ということで、明らかに行き過ぎと言わざるを得ないレベルにきているのだろうと思います。但し、表面上の為替推移は世界各国の金融経済政策のみならず、色々な要因が複雑に絡み合う中、その時々で具体的に決せられるものですから、短期的に上か下かと論ずるは極めて難しい話だと思います。
ドル円相場の先が非常に読み難い中で一つ言い得ることは、今後ボラティリティ(上下の変動)の高まった不安定な相場展開が当面続くのではないかということです。先ずは来週16~17日のFOMCでの利上げに関するガイダンスが注視されるところです。
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