前教理省長官の「飲酒運転」の顛末 --- 長谷川 良

2015年08月28日 14:46

ウィリアム・レヴァダ枢機卿が一時、警察に拘束された。アルコール飲酒が理由……このニュースをバチカン放送独語電子版が26日、報じていた。聖職者、それも著名な枢機卿の飲酒運転事件をバチカン法王庁の拡声器と一時揶揄されてきたバチカン放送が早々と報道していたわけだ。バチカンにも「報道の自由」の時代が到来しているのだろう。

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▲飲酒運転で拘束されたレヴァダ前バチカン教理庁長官(ハワイ警察当局)

さて、レヴァダ枢機卿といっても一般の読者は「誰?」と首を傾げられるだろう。バチカンで最高位を務めた聖職者だ。同枢機卿のプロフィールを簡単に紹介する。1936年6月15日にカリフォルニアのロングビーチで生まれ、現在79歳。ロサンジェルスの神学校で学んだ後、58年に勉学のためローマに派遣され、グレゴリアーナ大学で神学博士号を取得。61年に司祭叙階。博士号取得後、ロサンジェルス教区のセント・ジョン神学校で教えた。76年から82年まで教理省に勤務。同年5月12日司教叙階。95年12月27日から10年間、サンフランシスコ大司教を務めた。バチカン法王庁教理省長官だったヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿が第265代ローマ法王(べネディクト16世)に選出された後、空席となった教理省長官に任命され、2012年に定年引退するまで務めた。

教理省とは、昔の異端裁判所だ。その長官はカトリック教理の番人といわれ、多くの改革派や反法王派の信者たちから恐れられてきたポストだ。プロトコールからいえば、教理省長官はローマ法王、国務省長官に次ぐバチカン・ナンバー3のポストだ。

次に、バチカン前教理省長官のレヴァダ枢機卿の不祥事(飲酒運転事件)の経過を紹介する。枢機卿が神父たちとハワイで休暇を過ごしていた。食事後1人で車を運転していた。警備中の交通警察官が「運転の仕方がおかしい」と見て、枢機卿の車をストップ。アルコール検査をしたところ、ハワイの交通規則となっているアルコール許容量を大きくオーバーしていた。そこで枢機卿は警察まで連行され、数時間拘束された。枢機卿は結局、500ドルの保釈金を払い、釈放されたというわけだ。

枢機卿の飲酒運転を報道したワシントン・ポストによると、枢機卿は、「自分は運転に対して過信していた。まったく申し訳ないことをした。警察当局の調べには協力する」と述べたという。問題が飲酒運転だけなら大きくならないだろうと予想されているが、事件の詳細について、警察当局も枢機卿担当報道官もこれまでのところ何も明らかにしていないという。なお、同枢機卿に対しては、大司教時代、未成年者へ性的虐待した聖職者の性犯罪を熟知しながら隠蔽していた疑いがもたれてきた。

興味深いことは、ワシントン・ポストによると、レヴァダ枢機卿のサンフランシスコ大司教の後継者、Salvatore Joseph Cordileone 現大司教も2012年8月、同じように飲酒運転で執行猶3年の有罪判決を受けていることだ。サンフランシスコ大司教のポストはアルコールを飲酒しないと務まらないほど激務なのか。それとも、前任の大司教も現職の大司教もアルコールを飲酒して車を運転し、たまたま不幸にも警察官に見つかっただけのことだろうか。真相は神のみぞ知ることだ。

【短信】 金正恩氏、ITF総裁に若い世代起用

米テコンドー専門誌「テコンドー・タイムズ」電子版が26日、報じたところによると、ブルガリアの第2都市プロヴディフ市(Plovdiv)で開催中の国際テコンドー連盟(ITF)の19回世界選手権と同時に開かれたITF総会で総裁人事が行われ、新総裁にリ・ヨンソン(Ri Yong Son)師範が選出された。張雄総裁は終身名誉総裁に任命された。

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▲ITFの新総裁に選出されたリ・ヨンソン氏(同氏の左は張雄前総裁)=専門誌「テコンドー・タイムズ」のHPから

リ新総裁(50歳代の初め)は1990年初めからテコンドー創設者・崔泓熙氏に師事し、張雄総裁時代にはウィーンのITF本部で事務局長として世界各地の支部を訪問し、指導してきた、その後、母国に戻りテコンドー委員会と国家オリンピック委員会の副会長に就任した。リ新総裁は張前総裁がやり残したITFのオリンピック競技参加を最大の課題として取り組んでいく。

一方、名誉総裁となる張氏(77)は崔泓熙氏の死後、13年間総裁として働いてきた。張氏は今後、名誉総裁としてITFの財政基盤の構築と、韓国主導の世界テコンドー連盟(WTF)との連携に力を注ぐという。

世界のテコンドーは、韓国主導のWTFと北朝鮮が管理するITFの2つに分かれているが、ITFは更に3分裂している。テコンドー連盟は1966年、崔泓熙氏が創設したが、同氏が2002年に死去すると、同総裁の息子・重華氏を中心としたITF、ITF副総裁だったトラン・トリュ・クァン氏が旗揚げしたITF、そして張雄総裁を中心とした北主導のITFの3グループに分裂した。

次期総裁選では、WTFとの連携に実績のある張氏の続投が有力だったが、「金正恩第1書記は指導部の若返りに乗り出しているから、若い候補者が擁立されるのではないか」という声があった(「南北テコンドーの再統一成るか」2015年8月23日参考)。

なお、1996年7月から国際オリンピック委員会(IOC)の委員を務める張氏は、今回ITF総裁から降りたことから、IOC委員のポストも失うのではないか、といった噂が流れている。同氏は今年10月、訪韓予定だったが、訪問がキャンセルされる可能性が出てきた。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年8月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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