29日の首相動静を見ていたところ、思わぬ人の名前を見つけてしまいました。「10時30分 グランドプリンスホテル高輪でシェリー・ブレア元英首相夫人。続いてブラジルの企業家の青木智栄子さんらと写真撮影」。 この後、開催された「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」にはIMFのラガルドさんを始め、世界から著名な女性リーダーが集まった中で安倍首相もスピーチされ、女性の社会躍進の後押しをされています。
さて、この青木智栄子さんは私が秘書時代に仕えた会長(当時)の奥様であり、また、ホテル部門の社長として指揮を執っていた方であります。ゼネコンの複雑怪奇な世界でビジネスを推進する会長に対して奥様が進めるホスピタリティ部門はある意味、水と油のようなものであります。出張だらけの当時、会長の出張には奥さまが同行されることが多く、秘書共々ある意味、家族のようなおつきあいでありました。夫人は高杉良氏の小説「ザ ゼネコン」のモデルの一人でもあります。
思い出すのは長期出張で思いがけず、正月をブラジルのサンパウロで過ごすことになり、大晦日にご夫妻とブラジル式パーティで盛り上がり、翌正月に三人でおせち料理を食べたことでしょうか?その会長も数年前にお亡くなりになり、持つものも持たず、日本に飛んだ際、会長のご自宅で夫人に久しぶりに再会しましたが、小さい体なのに昔のバイタリティいっぱいであり嬉しく思いました。
智栄子さんはブラジルではブルーツリーの名でホテルマネージメントを行っており、同国では代表的女性経営者として常に名が挙がってきます。気遣いについては格別の印象があります。その昔、ロスに出張に行った際、お休みの日曜日に会長から「うちのワイフと一日付き合ってやってくれ」と言われ、朝っぱらから二人でお出かけすることに。「あなたの好きなところに行くわ」と言われ、どぎまぎしながらサンタモニカでランチ。昼食後、「今度は私に付き合って」と言われ、ヤオハンで巨大なカート二杯分の雑貨をご購入され、正にマンガに出てくるような荷物持ちの男と化しておりました。「どうされるのですか、こんなに?」と聞けば「ブラジルにはこんな安くて良いものはないのよ。」とせっせとホテルの調度品らしきものを揃えていらっしゃったのです。
Aeraの14年7月14日号、「現代の肖像」に智栄子氏の5ページに渡る特集が出ており、その後、記事のライターである田崎健太氏にお会いしました。彼も智栄子さんの生きざまに深く感じるところがあり、何やら次のプロジェクトをお考えになっているところがあるようです。それぐらいテイストがある方です。
北米にいると女性が普通に社会生活の中で男性と同等になっているのが当たり前ですので、今さら「女性が輝く」という冠のついたシンポジウムには違和感すらあるのですが、これは国によってその「開放度」はまるで違います。日本はまだまだなのでしょうね。
そういえば今年の2月、経団連で女性初の役員選出が話題になりました。BTジャパンの吉田晴乃さんです。彼女も実は私は知っているのですが、カナダ バンクーバーの通信会社でものすごい活躍をしていた方です。ずいぶん時間を経て、しっかりした地位を築かれているのをみて嬉しく思うのは青木智栄子さんにしろ、吉田晴乃さんにしろ、決して足を止めなかったという点が共通しています。パッションが24時間365日続いているような方です。そしてぶれないのです。だから一つの世界をきっちり極めていらっしゃるように感じます。
女性は時として輝きを衣服や装飾品に代替させようとします。でも中身がなければその輝きも鈍ります。逆に中身が輝いている人は何を着ても素敵に見えるものです。私から見る女性の輝きとはそういうものです。そして男性はそのあたりをしっかり見ているものです。
社会が女性の活躍を後押しする風潮に甘えるのではなく、女性が自分への厳しさを認識し、鍛えぬくことも忘れてはいけないのでしょう。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月31日付より