2020年GDP600兆円
先日テレビで安倍首相の経済政策顧問である本田悦朗氏が「年率3.4%で5年間成長すれば達成可能」と言っていた。これまで安倍政権下3年の成長率は平均1%にも満たない。どこから3.4%が出て来たのか分からない。
平均50点の劣等生が「ぼく次の学期で平均90点取る」と言っても誰が信じるのか。これを絵に描いた餅と謂うのだ。
ついこの間言っていた「10年でGNI(国民総所得)150万円増」との整合性はどうなっているの?
同じ番組で本田さんは「消費が振るわないのは去年の消費税3%アップがこたえている」と言った。本田さんの認識は間違っている。消費が振るわないのは、雇用増が給与水準の低い非正規で多いこと、円安による輸入インフレで日本国民が相対的に貧しくなったため。
本田さんのあの口ぶりではもう一度2017年の消費税2%アップ阻止に動きそうだ。
アベノミクスをもてはやしていたインフレ・ターゲット論者は、インフレ予想下で消費は増えると言ったが、馬鹿げている。
インフレ予想下で金持ちは、不動産、株式、外貨建資産等を購入するだろう。食品を買いだめするわけではない。金持ちでない人は、買いだめするどころか節約につとめるだろう。
それに正常な経済では、インフレが進行すれば金利は上がるのでキャッシュを物に替えたいインセンティブは働かない。
「インフレ予想下で人々は買い急ぐ」と言っている論者は、物価は上がっても金利は上がらない不正常な経済を前提にしているのだろう。
安倍首相は携帯電話キャリアに、通話料の引き下げを求めた。それ自体は結構だが、自らが主張していたデフレ脱却、インフレ・ターゲットと矛盾していることに気がつかないのだろうか。国民は誰も物価上昇など望んでいない。幸か不幸かこの20年以上日本はインフレと無縁であったため(但しそれがデフレであったとの認識は間違っている)、インフレの恐ろしさを忘れてしまった人が多いし、平成生まれの人はインフレを知らない。
安倍首相は、「安保(岸政権)から所得倍増へ(池田政権)」国民の目をそらすことに成功した自民党の成功体験に倣おうとしていると見る向きがある。或いはそうかもしれない。
だが役者が違いすぎる。大蔵次官、大蔵大臣を歴任した池田勇人に対し財政オンチの安倍晋三氏。その経済ブレーンを見れば、優れたエコノミストであった下村治に対し古巣大蔵省へのルサンチマンを抱く経済オンチの本田悦朗氏。
食品の軽減税率
明治時代じゃあるまいし今時食品だけが生活必需品であるという認識が時代錯誤。現代では、交通通信費、衣料費、水道電気代も生活に欠かせない。
それに食品は必需的なものに限らない、奢侈的なものもある。トリュフ、フォアグラ、キャビア等、これにも軽減税率を適用するわけ? では必需的食品と奢侈的食品を分けるのか。そんなことをしたら各業界団体のロビー活動で収拾がつかなくなるに決まっている。
「食品には10%の消費税を掛けません」というのであればまだしも「本来10%のところを8%に軽減します」程度の話に膨大な手間暇を掛けるのは馬鹿げている。
安倍首相は軽減税率に否定的な野田毅党税調会長を更迭してまで公明党の意に沿おうとしている。なぜ公明党にあれほど気を使うのか疑問に思う人は多いだろう。
公明票は700万票以上。日本の有権者数はおよそ1億。有効投票数は、投票率7割とすれば7千万票、同6割とすれば6千万票。つまり公明票は有効票の10%以上を占めることになる。これは一人を選ぶ小選挙区制下では決定的だ。自民党は公明票中毒患者になったので禁断症状が怖くて公明党と別れられない。これも小選挙区制の予期せざる副作用だ。
政策が全く違う自民党と公明党の連立政権は日本国の不幸である。
安倍首相は、経済団体との会合の度に設備投資を増やすよう促す。だが企業は金が余っているからといって設備投資を増やすわけではない。企業が設備投資するのは自らの商品又はサービスが売れる見通しがある時だ。そうでなくて闇雲に設備投資を増やすのは背任罪になりかねない。
ロシア外交
近頃のロシアの振る舞いを見れば当面対日関係改善の気がないことぐらい分かりそうなもの。ましてウクライナ、シリアでアメリカと激しく対立している情況下でロシアに何かを期待すべきではない。北方領土と資源調達の面でロシアと話を進めたいのは理解できるが、今こちらから擦り寄るのは下策だ。
公明・山口代表、習主席に訪日を要請
習近平氏訪日要請が、安倍首相の意向を受けたものか、それとも山口氏の独断専行かわからないが、今の情況で習近平氏が訪日しても、碌なことにはならない。江沢民訪日がそうであったように、日本国民は傲然とふるまう習近平氏を見て嫌中感情を高めるのが関の山だ。
青木亮
英語中国語翻訳者