田舎が生き残る観光論。薄利多売型から脱却を! --- 井上 貴至

アゴラ

沖永良部島から和泊町若者未来会議の皆様がIn長島。
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県内といっても、南北600キロの鹿児島県。
和泊から最北端の長島町に来るよりも、東京に行く方が早いんですよ。
それでも来てくださったのがとても嬉しいです。

農業や空き店舗対策などいろいろ意見交換したのですが、
ブログで紹介したいのが「観光政策」。

これまで観光というと、団体旅行を対象にして、薄利多売が中心だったので、ともすれば、地域の観光政策も、どうすればたくさんの人が来てくれるか(入込数の増加)という視点になりがちですが、

薄利多売で儲かるのは、多売できる大手旅行業者だけ。
田舎は、まず多売することができません。

特に、沖永良部島のような離島は、その傾向が顕著です。
飛行機か船かしか外からの交通手段がないので、自ずから入込数には制限があります。

⇒ だから、仮に田舎で観光を「産業」にすることを目指すならば、ひとりの人からいかにたくさんのお金をいただくことこと(厚利小売)、そのために、その土地でしかないもの・コンテンツをどう磨いていくかが重要になります。

「いや、飛行機の値段を安くすればたくさん来てくれるはずだ」という意見もよく伺うのですが、飛行機の値段が問題ならば、なぜ大都市部から、はるかに飛行機代が高い・時間もかかるヨーロッパにたくさんの人が訪れるのでしょうか?

それは、やはりヨーロッパにしかないもの・コンテンツがたくさんあるからです。

その上、「飛行機の値段を安くする」というのは決して簡単なことではありませんし、税金を投入した対処療法的措置・延命措置にしかならないことも珍しくありません。持続はなかなか難しいでしょう。

⇒ 繰り返しになりますが、田舎で観光を「産業」にすることを目指すならば、そこにしかないもの・コンテンツを磨いて、地域の価値を高めていくべきです。

そして、そのためには、外の視点が不可欠です。
外の人が何に喜ぶのか、そしてその良さを外の人にどう伝え届けていくのか。
中の人「だけ」ではとうてい考え、実行することはできません。

 ●大きなホテルをつくれば、人が来てくれるはずだ・・・
 ●大きな道路ができたら、人が来てくれるはずだ・・・
 ●安い飛行機が飛んだら、人が来てくれるはずだ・・・
 
「どうすればたくさん人が来てくれるか」
というのは、そもそも基本的に田舎が目指す方向性ではないし、早く、この施設依存神話から脱却すべきです。

もちろん、最初は「ある程度」人が来てくれます。
しかし、田舎が規模や施設を求めた時には、ゆくゆくは都会にのまれ、飽きられ、ほとんど使われない施設と借金だけが残ってしまいます。

むしろひとりあたりの満足度をいかに高めていくか、
そしてどうすれば適切な対価を払ってもらえるか
そこにしかないもの・コンテンツを磨いていくことが大切だと思います。

今年度から旅行業界誌「トラベルジャーナル」に月1回連載しています。
そちらもぜひ読んでみてください。

<関連記事>
鹿児島県長島町は、水俣「湯の児温泉」とどう差別化するか?地方創生の現場で考えてみた。
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68387159.html


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<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

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編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2015年11月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。