50人から1人だけ選んでくださいって無理じゃない?

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日は午前中に地元小学校の式典に出席させていただいた後、今月末から市議選が始まる朝霞市に政治活動応援に入りました。


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われわれ元気会は松下まさよ朝霞市議(現職)を朝霞市議会選挙の公認内定者として決定しています。

最近の選挙でことごとく「過去最低」の投票率を記録し続けている全国各地の地方議員選挙。もはや自治体全有権者の3%程度を得票できれば当選ができると言われています。

10~50人の議員が当選する市区町村議会選挙では、都市部でも1,000票から3,000票。郊外にいけば数百票で当選するという例も少なくありません。

これは「大選挙区(中選挙区)単記制」という日本独特の仕組みに因るものです。

単記制とは、一名(単独)の名前しか選挙でかけない制度です。
その選挙区から何十人の議員が当選しようとも、有権者が名前をかけるのはそのうちのたった一人です。

私たちは市区町村議会選挙でこの制度に慣れ親しんでいるので、これが普通だと思いがちなのですが、実は世界的に見ればかなり珍しい日本独特のシステムと言えます。

通常、複数人が当選する中選挙区・大選挙区と言われる制度では、「連記制」が採用されます。3人が当選するなら有権者が、投票用紙に任意の3名の名前が書けるというわけですね。

なので政党側も、その当選枠に合わせて候補者を擁立します。
3人枠の選挙区なら、だいたい3名の候補者を立てる。

これに対して有権者は、すべて自分が支持する政党に票を固める人もいれば、

「自民・民主・共産に分散して入れよう」

など、戦略的に投票するなどの行動も取れるようになります。
ゆえに政党政治が健全な形で機能する、これが世界標準です。

逆に日本では、地方議員選挙では「政党名」で候補者を選ぼうにも、選択肢が多すぎて選べないという弊害が発生します。相当な組織力がなければ政党側も、狙い通りの数の候補者を通すことは不可能です。

余談ですがそんなところからも、見事なまでに候補者に票を割り振って、地方議員選挙で全員を当選させ続ける某宗教政党の凄まじさがお分かりいただけるのではないでしょうか。。


「大選挙区」と「中選挙区」は当選人数の規模で日本ではなんとなく区分けされますが、「複数人が当選する制度」ということで、学術的にはほぼ違いがなく同じ意味で使用されます。

加えて「大選挙区(中選挙区)単記制」の最大の弊害は、候補者が特定組織や地域の票固めに走ることにあります。

ある程度の得票で当選できるのであれば、自治体全体の利益を考えるよりも

「自分を応援してくれる支援者に利益誘導する」

というのが、議員としての最適行動になるからです。
とはいえ小選挙区制度が万能かといえばそうではなく、ある地域で一人しか当選しない選挙制度下では

「すべての候補者の政策が中道に寄る」

という現象が起こりまして、どっちつかずの政策や主張が繰り返され、意思決定スピードや質が落ちる可能性が否定できません。

こうした2つのあいのこが「大(中)選挙区連記制」ですけども、これはこれで有権者の投票行動が複雑化しますし、我が国で必ず成功するとは限りません。

以上のように選挙制度に論理的な「正解」というものはなく、何が最適かはその国の文化や歴史・国民性によっても異なります。
様々な国で、色々な制度が試されては消えていきました。

ただその中でも「大(中)選挙区単記制」というのは、冒頭に述べた通り極めてイレギュラーな存在であり、そろそろ改善が議論されても良いのではないかと思います。

数十人の候補から投票できるのは一人だけ。
候補者も知らなければ、政党名で選ぶこともできない。
誰がやっても同じみたいだから、いっそ投票なんか行かなくていいや!

…こんな結果を誘引している一つに、地方議員選挙の制度も関連しているのかもしれません。

選挙制度改革というと何かと国政選挙や「議員定数」ばかりが議論されますが、このような自治体選挙自体の問題点にも、時には関心を持っていただきたいなあと思う次第です。

朝霞市議選は12月6日(日)が投開票日となります。
埼玉県朝霞市の方はぜひ、ご注目くださいませ。

それでは、また明日。

おときた駿 プロフィール
東京都議会議員(北区選出)/北区出身 31歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、地方議員トップブロガーとして活動中。

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