マネー誌の「株主優待」と「1億円」特集は辞めるべき --- 内藤 忍

毎月21日は、マネー誌の発売日です。老舗の日経マネー、分配金と理論株価のダイヤモンドZAi、個別銘柄のネットマネーというのが私のイメージですが、同じ業界で仕事をするものとして、どうにも不思議に思うことがあります。

それは、毎月のように繰り返される似たような特集です。特に目に付くのが、「優待名人」が登場する「株主優待」と、老後の不安を解消するための「1億円特集」です。本日の広告にも2つの定番ネタがしっかり特集されています(写真)。

株主優待は楽しい仕組みですが、株式投資の本質は企業価値の分析によって割安な株を見つけだし、リターンを狙うことです。優待や配当を金銭換算して、実質利回りを計算したいのは良く理解できます。しかし、これでは毎月分配型投信の分配金だけを見ているマネーリテラシーの低い投資家の目線と同じです。個人投資家を啓蒙するという理念があるのなら、「楽しい投資」ではなく「儲かる投資」フォーカスすべきではないでしょうか。

1億円特集も繰り返し出てくるところを見ると人気の企画のようです。しかし、セミナーで投資家の方に聞いてみると、世代に関係なく「60歳までに1億円」より「60歳から一生毎月50万円」を望む人が圧倒的です。シニアになってまとまった資金を手に入れても、それをどうやって運用して良いかわからない。それよりは、定期的に収入を得られる方法を知りたいというニーズの方が高いのです。

1億円持っていても、毎月50万円使えば、1年後の資産は9400万円になってしまいます。お金が減っているのを見ると怖くて使えなくなります。ところが毎月50万円を手に入れる方法があれば、毎月50万円を使い切っても翌月またお金が手に入りますから安心です。資産を積み上げる方法だけではなく、定期的にインカムが得られる仕組みの構築を知りたいというニーズに対応したコンテンツが欲しいと思っている読者は多いはずです。

2つの定番特集が繰り返されるのは、読者のニーズが強く売れるからと言われてしまえばそれまでです。しかし、読者の本当のニーズは、面白い「金融エンターテイメント」ではなく「お金の不安を解消する処方箋」のはずです。個人投資家にとって真にメリットのある価値提供ができなければ、いずれ先細りになってしまうことを懸念しています。

同じ業界で仕事をする者として、マネー誌のこれからの発展を願って、敢えて書きにくいことを書かせていただきました。関係者のご意見を頂ければ幸いです。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年11月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。