イスラム寺院の聖域に監視の目 --- 長谷川 良

2015年12月06日 11:30

フランスには約2600のイスラム寺院があるが、近日中に100カ所から160カ所の寺院が閉鎖されるという。その理由はイスラム教過激思想の拠点となっている疑いがあるからだ。300人の犠牲者を出した「パリ同時テロ」(11月13日)から学んだ教訓に基づいた改革の一環だ。これはフランスのイスラム教指導者のHassan El Alaoui師は3日、アルジャジーラ放送とのインタビューの中で明らかにした。

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▲ウィーン市庁舎前広場のクリスマス市場風景(2015年11月13日、撮影)

「パリ同時テロ」後、フランスとベルギー両国は国内のイスラム寺院の監視強化を進めてきた。フランスの「イスラム評議会(Cfcm)」 は先月25日、カズヌーブ内相との会談で、イスラム教学者は今後正式な有資格者だけに制限することで合意している。具体的には、寛容と公平な教えを伝える教学者に限定し、憎悪説教者を追放していくというわけだ。もちろん、フランス社会の価値観(自由、平等、友愛)を擁護する教学者が願われる。同時に、宗教評議会を新設し、青年たちを過激なイスラム思想から保護するという。フランスのイスラム教組織グループは先月29日、宗教的動機に基づいた暴力に抗議する共同アピールを表明したばかりだ。

一方、「パリ同時テロ」ではテロ実行犯の拠点となったベルギーでもイスラム寺院では将来、大学や高等専門学校で教育を受けたイスラム教指導者しか説教できないようにする方針だ。これはベルギーのクーン・へーンス法務相とベルギーイスラム教評議会会長のNoureddine Smaili氏が先月25日、明らかにした内容だ。 同法務相はバチカン日刊紙「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」紙の中で「われわれは欧州のイスラム教を構築すべきだ」と語っている。

このコラム欄で紹介済みだが、中立国スイスではイスラム教徒に対し、「信仰の自由」の制限もやむを得ないという意見が出てきている。イスラム教問題専門家の ネクラ・ケレク氏はノイエ・ チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)紙で「宗教の自由」の制限を要求し、「イスラム教が平和志向の宗教と実証するまで、その信仰の自由を制限すべきだ」と主張している。

「宗教の自由」は「言論の自由」、「結社の自由」などと共に基本的人権であり、憲法に明記している国がほとんどだが、その宗教、信仰の自由も制限すべきだという提案が飛び出してきたわけだ。ケレク氏は、「イスラム教全般に対して疑っているのではないが、疑いを完全には排除できなくなった」と説明している。

スイスで2009年11月29日、イスラム寺院のミナレット(塔)建設を禁止すべきかを問う国民投票が実施され、禁止賛成約57%、反対約43%で可決された。ミナレット問題で先駆けて規制に乗り出したスイスらしく、イスラム教問題では同国は欧州の中で常に一歩先に行っている感じだ。

オーストリアの「リベラル・イスラム教」代表アミール・ベアティ氏(イラク出身)は「オーストリアのイスラム教寺院では久しく憎悪説教をする指導者がいる。彼らの多くは正式なアカデミックな教育を受けたイスラム教専門家ではない。西側社会の価値観を受け入れず、聖戦を呼びかけている指導者もいる」という。

「パリ同時テロ」後、欧州各地でイスラム・フォビア(イスラム嫌悪)が見られる。その一方、欧州各国は国内のイスラム教対策の第一弾として、これまで外部には閉鎖されてきたイスラム教寺院内の聖域(人事)に監視の目を強めてきたわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年12月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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