参議院を知らない若者と政治家が“飲み会”をする時 --- 選挙ドットコム

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(編集部より)選挙ドットコムの人気連載「小池みきの下から選挙入門」からの転載です。

政治と若者をつなぐ活動を行うNPO法人、YouthCreate代表・原田謙介氏へのインタビュー第二回。学生時代、国会議員のインターン経験を通じて、「政治の世界に若者がいない」ことへの疑問を抱いた原田氏。学生団体ivoteを立ち上げ、政治家と若者の接点づくりに取り組むことにしたが……。

【原田氏】
「団体を作ったはいいものの、最初のうちは何をすればいいかまったくわからなかったんですよ。3、4ヶ月は、立ち上げメンバー6人で集まって、どうするどうするって話してるだけでした」

【小池】
「前例がありませんもんね。いきなり接点を作ろうと思っても難しそうです」

【原田氏】
「とりあえず、色んな学生向けのイベントとか交流会に行きまくって、その中で無理矢理『選挙行ってる?』とか『政治興味ある?』って聞いてみたりしました。今考えると完全に空気の読めない草の根マーケティングですよね(笑)。その中でわかったのは、やっぱりみんな基本的に政治には興味がないってこと。ただ、『国会議員を見てみたい』というようなミーハー意識のある人はちょこちょこいたんです。そういう反応がヒントになって、『国会議員と飲む』っていう企画が生まれたんですよ」

【小池】
「あ~なるほど。テレビでよく見る政治家って、ほとんど芸能人のような感覚だったりしますね」

【原田氏】
「実際開催してみたら、参加者も集まりましたし、反応もよかったんです。国会議員というと自分たちからかけ離れた人間と思いがちだけど、実際に喋ってみると、意外と普通の人たちなんだということがわかったりする。それぞれに想いがあって、だからこそこの人たちは政治に取り組んでいるんだ、という見方ができるようになった人もいたみたいです」

【小池】
「国会議員の方々の反応はどうだったんでしょう」

【原田氏】
「議員さんたちにも喜んでもらえましたね。彼らが普段会う機会のある若者は、やっぱり政治意識の高い子たちなんですよ。『参議院って何?』っていうレベルの若者と接することってなかなかない。そういう子たちが何に悩んでいるのか、普段どんなことを考えているのかを知るのはとても大事なことだと感じていただけたらしくて。議員さんって、講演会みたいに、一方的に喋って終わりという場に出ることが多いけど、飲みの場だと双方向的な会話になるので、そこも“飲み会”の利点かなと思いました」

【小池】
「そういう場を作っていくことで、最終的にはこれを達成したい、というような目標みたいなものはあったんですか?」

【原田氏】
「僕らが考えていたのは、『若者が選挙に行く』ということを“かっこよく”したい、ということでした。僕がivoteを立ち上げたのは2008年ですが、この頃って、『次に衆議院選挙があったら確実に政権交代が起こる』って言われていたんですよ」

【小池】
「あ、そうか。自民党の支持率がどんどん落ちていた頃ですね。それで実際に、2009年の第45回衆議院議員総選挙で民主党政権が誕生して」

【原田氏】
「いい悪いは別として、政権交代というのは日本の政治史において大きなことで、『大きな一歩』にもなり得ますよね。だからこの選挙には若い人ももっと関心を持つべきだと思ったし、いかに若い人に選挙にいってもらうかを僕らも考えなければと思ったんです」

【小池】
「自分自身が若いときに、そういう俯瞰した視線を持てるのってすごいなー。ちなみに今学生の久保田さんは、十代の頃とか、選挙にどんな意識を持ってました?」

【久保田】
「両親が必ず選挙に行っていたので、子どもの頃から『行くのが当たり前なんだ』と思っていましたね。用事があったら期日前投票をするのが当然、という感じで」

【原田氏】
「家族とか、身近な人が投票に行っているかどうかってすごく影響するよね」

【小池】
「じゃあ、政治についても子どもの頃から関心ありましたか?」

【久保田さん】
「朝日小学生新聞を読んでいたので、政治ニュース自体には子どもの頃から親しんでいたんですけど、政治がもう少し身近になったのは小学六年の修学旅行のときですね。国会見学の案内をしてくれた議員さんが近所のおじちゃんだったんですよ(笑)。地方議員をしている、ということをそれまで知らなかったんです。それで前よりも関心を持つようにはなりました」

【原田氏】
「それが多分、俺の大学一年のときの感覚だな(笑)」

【小池】
「そして私のここ最近の感覚ですわ……。久保田さんの場合、そういう関心が積み重なって今があるんですね。YouthCreateに参加したのはどうしてですか?」

【久保田さん】
「知人に原田さんを紹介されて、理念とか考え方に共感したんです。私ももともと、政治の世界がおじさんばかりで回っていることに違和感を持っていたし、自分が住んでいる地域や社会に、若い人の声が反映できないのはおかしいと感じていたので」

【小池】
「それで名古屋からわざわざ通ってきてるんだ」

【原田氏】
「もう感謝しかないですね」

【小池】
「原田さんの家族は、政治への意識は高いほうでしたか?」

【原田氏】
「僕の親は、特に政治に強い関心があるというわけではなかったですね。だから、僕がどういう活動をしているのかも彼らにはわかりづらかったと思う。活動に反対されたこともありましたし……。でも、他のことをする気がないんだから仕方ありませんよね」

【小池】
「だから卒業した後もYouthCreateという組織を作ったんですね。その熱意の原動力はなんなんですか?」

【原田氏】
「ivoteを三年間運営してみて、『もっともっと何かやれそうだな』という感覚があったんですよ。欧米なんかだと、こういう若者の政治参加を促進するための仕事って割と一般的なんですが、日本にはまだまだ足りていないですし。僕ひとりにできることなんてたかがしれてるから、政治と有権者の間で動く人なり組織なりにもっと出てきてほしい。そのロールモデルづくりになんとか貢献できたらいいなあと思って……。でもまだまだですね。NPO運営って、大変なこともいろいろあるので、若い子に『こっちの世界には来ない方がいいぞ』なんて偉そうに言っちゃうこともあります(笑)」

【小池】
「やめてください、そんなおじさんみたいなこと言うのは~~!(同い年の叫び)」


小池みき:ライター・漫画家
1987年生まれ。郷土史本編集、金融会社勤めなどを経てフリー。書籍制作を中心に、文筆とマンガの両方で活動中。手がけた書籍に『百合のリアル』(牧村朝子著)、『萌えを立体に!』(ミカタン著)など。著書としては、エッセイコミック『同居人の美少女がレズビアンだった件。』がある。名前の通りのラーメン好き


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編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月18日の記事『参議院を知らない若者と政治家が“飲み会”をする時(小池みきの下から選挙入門 .24)』を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。