共産党に助成金なしでも運営できる秘密を聞いた(3) --- 選挙ドットコム

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税金から各政党に支出される「政党助成金」。

総務省のHPで調べてみると、「政党助成制度は、国が政党に対し政党交付金による助成を行うことにより、政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とした制度です。」とあります。

政党助成金をもらわず、党費・機関紙・個人寄付で党運営をしている「日本共産党中央委員会」の幹部会委員・財務部長の大久保健三さんへのインタビュー第3回は、赤旗新聞スクープの秘密と、来年夏の参院選に向けて共産党が呼びかけた「国民連合政府」についてお話をうかがいました。

スクープの秘訣は「信頼」


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共産党幹部会委員・財務部長の大久保健三さん

ーー赤旗新聞のスクープがすごいですね。
赤旗の記者も頑張っているし、それだけではなくて、編集局以外の本部の職員もあらゆる情報網を生かしていますし、地方の組織もそうしています。共産党は「足で稼ぐ調査」というものには定評があると思います。足で稼ぐといいましたが、限界はありますので、それ以外にも「共産党なら安心してお知らせしますよ」と、信頼して情報や資料を提供していただけることもあります。国会質問などでも共産党の議員が爆弾発言といいますか、そういうものもありますけど、いただいた情報の裏付けをしっかりとしていますので、信頼していただけるのではないかと思います。

ーーそういった「信頼」というベースがあるからでしょうか。自民党の大物議員の方が紙面に出ていました。
それも信頼関係なんですが、自民党が従来守ってきた自民党としての立場というのがいろんな形であるんですが「保守本流」といわれていた人たちが、自分たちが堅持してきたことに対して「我慢ならない」ということがあったんだと思います。「戦争は二度とやってはいけない」「平和憲法は大事だ」「自衛隊はあくまで専守防衛」というのは、自民党自身も守ってきたことなんですよね。
沖縄(県知事)の翁長雄志さんみたいに、自民党の代表的な立場だった人を含めて、保守・革新という枠を越えて、辺野古に強引に基地を押し付けるということは納得できない、一致して「オール沖縄」というか、心をひとつにして翁長さん自身も頑張っていると思うんですよね。
沖縄だけでなく日本全国で、本来そういう部分で団結することに大きな可能性があると思っているんです。私たちは一言で「安倍内閣の暴走」といってるんですが、それを止めようということで。

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ーー来夏の参院選で共産党が野党共闘を呼びかけました。沖縄での成功体験がきっかけなんでしょうか?
沖縄の経験はもちろん土台にあるんですが、今年の夏から秋にかけて、安保法制に反対するということで野党が協力して、学生や学者さん、ママさんたちが安保法制に反対していました。我々としては、これは戦争をするための法案だから「戦争法案」と呼んでいますが、これを廃案にしようということでずっと活動してきましたし、世論調査でも反対の声が多いにもかかわらず、強行採決したわけですよね。

あのときは夜中の2時頃に強行採決されたんですが、共産党はその日の午前中から午後にかけて、中央委員会としての正式な会議を開いて、その日の夕方に、志位(和夫日本共産党委員長)さんが、この法案を廃止するために国民連合政府をつくろうと、新しい提案を発表したんです。一緒に戦ってきた人に、強行されたからといってこの法律だけは放っておけない、廃案にするためにいろんな意見や政策の違いを乗り越えて、文字通りこの一点で共闘していこうと。それと憲法に基づくルールが踏みにじられているので、「立憲主義の回復」をするということです。これは個々の政策問題以前の問題で、これが元に戻らなければ、日本の政治はまともにやっていけないという問題ですから、団結して「国民連合政府」をつくろうという提案です。

「戦争法案の廃案」ということで団結しようということなんですが、「政府」といっている理由は、政府をつくらないと、法案は廃案にできても閣議決定は撤回できないからなんです。昨年7月に、安倍内閣は「集団的自衛権容認」の閣議決定をしているので、これを元に戻さないと火種が残ってしまいます。閣議決定を取り消すためには政府を作らないと。そして、政府を作るためには選挙協力をしなければいけないということで、そういう提案をして、大きな反響を呼んだんですよね。

新しい挑戦に踏み出しつつある共産党


ーー12月15日(火)に、熊本県で共産党の候補者の取り消しというニュースがありました。
志位さんが「国民連合政府」についてを発表したときから、「日本共産党は来年夏の参院選で、野党が選挙協力をするのであれば、一度立てた候補者を降ろして、共同の候補当選のために全力で協力します」といってきたんです。
熊本は、市民が1,000人、2,000人の集会をやってきたんですよね。そういうことをずっと重ねてきた中で、市民団体側から「野党は共闘してくれ」と政党に要請があって、それを受けたんです。ここまで一緒にやってきた5つの政党は「一緒に候補者を立てましょう」ということになってきた段階です。他の県でもいろんな形で政党も市民団体も一緒になっていく選挙にしていきたいということです。

ーー取り消しになった候補者も納得しているのでしょうか?
熊本だけではなくほとんどの県で候補者が決まっていて、決まっているだけではなくて、すでに「私を立たせてください」と、本人は候補者として演説などの活動をしてきました。ですが、野党も市民も協力してやっていくことが安倍内閣に迫っていくことになります。志位さんが9月に発表していますし、ここまでの間に話し合いをしていますから、本人も納得しています。

ーー志位さんが野党共闘を呼びかけたときは、とても驚きました。
党内でも驚いたんですよ(笑)。新しい挑戦に踏み込みつつあるんです。
早とちりの新聞社なんかは「民主党と共産党の候補者がかちあっていて、これでは勝てないじゃないか」と書かれたこともありますけど、私たちとしては、野党が協力するというときは、それが最優先なんです。

志位さんが海外特派員協会で9月の初めに「国民連合政府」について説明したんですが、1回の会見の中で何度も何度も「本気」という言葉を使ったんですね。いかに本気でやろうとしているのかという表れなので、ぜひその辺は国民の皆さんに理解していただきたいし、理解していただけると思っています。
<完>


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小窓(ペンネーム):Web編集者など
20歳頃から出入りしていた編集部から声をかけられたことをきっかけに雑誌編集者となり、Web編集者に転じる。その後、ひょんなことから取材活動を始める。現在、政治を勉強しながら執筆活動など。猫2匹と同居中。


編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月22日の記事『「ぶっちゃけ、赤旗の収入なんですか!?」共産党が政党助成金なしでも存続できる理由を聞いてきた <Part3>』を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。なお、アゴラでは寄稿者は原則実名制とさせていただいていますが、今回は配信元が身元確認の上、契約している筆者であること等を考慮し、匿名原稿を掲載しました。ご了承ください。