「政党助成金」が話題になることがあります。総務省の政党助成金に関するページによると、「政党助成制度は、国が政党に対し政党交付金による助成を行うことにより、政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とした制度です。」と書かれています。
そもそも、政党はどこからお金をもらい、運営しているのでしょうか。
今回は、政党助成金をもらわずに党を運営している「日本共産党中央委員会」の幹部会委員・財務部長の大久保健三さんに、党運営の秘密と政党助成金禁止法案、企業・個人献金禁止法案についてお話をうかがいました。
政党助成金がなくても党の運営ができる秘密
ーーなぜ、政党助成金をもらわないのですか?
政党助成金ができたのは1995年で20年前です。制度が新設されてからずっと反対してきてずっと受け取っていませんし、1円も受け取らないということを主張してきました。
まず、政党助成金はそれを申請した政党がもらえるもので、日本共産党は申請しないので、1円も受け取ってないということなんですね。
ーー申請しない理由とは?
なぜ申請しないかというと、「憲法違反の制度だ」ということを最初から言ってるんです。どういうことかというと、国民が納めた税金の中から一人当たり250円、総額320億円を、政党が山分けする制度ですよね。国民側から見れば、赤ちゃんからお年寄りまで全員が負担させられて、自分の意思とは関わりなく、実際上は政党に献金させられることと同じなんです。国民の側には、政党に寄付する・しないという自由もあるし、寄付するにしても、どの政党に寄付するかを選ぶ自由があるはずなんですが、それが一切無視されて、本人と関わりがないところで山分けされているんです。憲法19条で「思想・良心の自由」を規定していますけど、それを踏みにじっていて、憲法とは相容れない制度だということなんです。
もうひとつは、政治や政党を劣化させるものだということです。この制度を20年やってきて事実で実証されていると思いますが、申請した政党は、何の苦労もなく巨額の資金が転がり込んできて、それを飲み食いに使おうが、勝手放題なんですね。
ーーお金が余ったときは、国に返さないのですか?
使い残したら国に返すのかと思ったら、返金しなければいけない規定はあるけれど「基金」というものが別の条項に書いてあって、返さずに翌年に繰り越せるんです。使い放題、返さなくていいお金が億という単位になると、政治家の金銭感覚が麻痺するのは当然のことで、いろいろな事件が起こってきたんですよね。
一人ひとりの政治家だけではなくて、政党そのもの、例えば自民党は一番多くの政党助成金をもらっていて、総務省の公表資料を見ると、2014年の「選挙関係費」という自民党本部のお金があるんですが、その97%が政党助成金なんです。宣伝事業費に至っては100%。自分の選挙をやるのに自前で資金を準備せず、宣伝を税金で行っているということなんです。個々の政治家だけでなく、受け取っている政党そのものが、私に言わせれば堕落の極みだと思うんです。税金を使って自己宣伝しているわけですから。
助成金ナシで党を運営する秘訣は「強固な3本の柱」
ーー政党助成金をもらわずに党運営をできる理由を教えてください。
政党助成金をもらわずになぜやっていけるのか? ということですが、もらわなくても実際にやっているわけです。総務省が発表している各党の収支報告書を見てもらえば分かるように、政党助成金の欄は何も書かれていないんですね。企業献金の部分も同じです。
日常活動でいうと、『赤旗』という機関紙を発行していて、その購読料が入ってきます。それを元にして新聞をつくる経費がかかります。
各党の政治資金が発表されたというニュースが出ると、1位は自民党、2位は共産党ということになってるんですが、発行部数が100万部を超える新聞があって、それを発行・購読するという流れがあるので金額が大きく見えているんですけど、そういうことを別にすれば、政策を全有権者にお知らせするというときにビラを作る、そういうときに何千万、場合によっては億という金がかかりますから、我々にとって金がかかることには間違い無いです。
それでもなぜやっていけるかというと、具体的には、1番目は、地域の中で一生懸命活動して党員を作り、支部を作るということをやっているんですね。党費自体は他の党にもありますが、党員が納める「党費」が収入です。
2番目は「新聞赤旗」。新聞だけではなく雑誌等もありますので、「機関紙事業収入」といってるんですが、これを全国あらゆる地域で宣伝し、取っていただいて、読者のネットワークを広げていく。これが日本共産党と一般国民の皆様との結びつきになっていくんですね。
3番目は、我々は「募金活動」といっていますが、共産党の政策を宣伝する中で党を支持していただく、共感していただく中で、「頑張ってください」という気持ちを込めていただく個人寄付です。あらゆる資金はこの3つでまかっています。
ーー具体的な金額を教えてください!
「党費」はどの政党にもあるので省略しますが、2番目の「機関紙事業収入」は、日本共産党本部の2014年の収入の中の86.6%で、圧倒的に多いです。金額でいうと、2014年は197億円です。自民党が同じ年に受け取った政党助成金は158億円です。最も多くの政党助成金を受け取っている党より明確に多い金額が、「新聞赤旗」を中心とした活動から生まれているんです。我々の立場からいえば、共産党がいかに「新聞赤旗」を中心に活動し、それによって国民の皆様との結びつきをつくっていっているかという、党の活動があらわれていると思っているんです。若い方からお年寄りまで、地域の中で「少しでも日本共産党のことを知ってください」という気持ちで「地域の中で活動する」ということを本気でやれば、獲得できる。これが、政党助成金がなくてもやっていけるということを証明していることになるのではないかと思います。
<Part2に続く>
小窓(ペンネーム):Web編集者など
20歳頃から出入りしていた編集部から声をかけられたことをきっかけに雑誌編集者となり、Web編集者に転じる。その後、ひょんなことから取材活動を始める。現在、政治を勉強しながら執筆活動など。猫2匹と同居中。
編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月17日の記事『「ぶっちゃけ、赤旗の収入なんですか!?」共産党が政党助成金なしでも存続できる理由を聞いてきた <Part1>』を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。なお、アゴラでは寄稿者は原則実名制とさせていただいていますが、今回は配信元が身元確認の上、契約している筆者であること等を考慮し、匿名原稿を掲載しました。ご了承ください。