共産党に助成金なしでも運営できる秘密を聞いた(2) --- 選挙ドットコム

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税金から各政党に支出される「政党助成金」。
総務省のHPで調べてみると、「政党助成制度は、国が政党に対し政党交付金による助成を行うことにより、政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とした制度です。」とあります。

政党助成金をもらわず、党費・機関紙・個人寄付で党運営をしている「日本共産党中央委員会」の幹部会委員・財務部長の大久保健三さんへのインタビュー第2弾は、個人寄付と企業・個人献金禁止法案についてお届けします。

他政党の政党助成金学を上回る、共産党の個人寄付


ーー政治はお金がかかるといわれます。例えば、選挙にもお金はかかるのでしょうか?
選挙でお金がかかるといっても、上限(最高限度額)が決められているんです。共産党の場合、どんな選挙でもその規模にはいかないです。それは国政でも地方選挙でも同じです。選挙は金がかかるといってる人たちは何に使っているんでしょうね。
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共産党幹部会委員・財務部長の大久保健三さん

ーーHPには、党員の方からの寄付もあると書かれていましたが?
個人寄付は、本部と地方支部を合わせた政党全体で1年間に集めた金額は、最新の公表資料が2013年のものですが、1年間で77.3億円なんです。自民党の個人寄付が45億なので、大きく上回っているのは確かですし、それ以外の政党が受け取っている政党助成金よりも多い金額です。政党によっては、ほとんどすべての収入が政党助成金だという党もありますが、共産党は個人寄付だけで、それ以上のお金をつくっているということになります。寄付はどこまでも自発的なもので強制ではないんです。

これは総論的というか抽象的な言い方になりますが、本来はどの党でもこうあるべきだと思うんです。国民の中で活動をし、支持を広げて、支持していただくことを土台にして資金を作る。国民の支えで活動資金を作るということなんですね。まじめにそういうことをやっているだけなんです。それは共産党に限らず、近代政党、国民政党であればそうするべきだと思うんです。

ーー「日本に寄付文化を根付かせよう」というニュースもありました。個人献金が集まらないことに悩んでいる議員もいるようですが?
真面目に努力することですよ(笑)
今、個人寄付の金額をいいましたけど、あくまでそれは、いわゆる悪い意味での「カネ集め」ではなく、政策をお伝えして「この活動なら応援するよ」といっていただけて、寄付していただけるという格好です。積み上げればこの額になるんですが、ひつひとつは200円とかです。でも、寄付だけ集めようとしてもできないんですよ。共産党を知っていただく中で「応援するよ」ということで返ってくるんです。

政治とカネの問題は解決していない


ーー政党助成金廃止法案とはどのようなものでしょうか?
毎年、年末年始にいろんな政党がくっついたり離れたりする離合集散があるのは、毎年1月1日に存在している政党が申請すれば、政党助成金を受け取れるという規定があるからなんです。政党助成金をもらうための「政党要件」というのがありまして、国会議員でいえば5人以上。とにかく5人揃えばもらえるんです。だから、そこに向かっていろんな政党がくっついたり離れたり。そういうことがこの20年、ずっと続いているんですね。

この政党助成金を集計すると、20年間で6,311億円(1995年~2014年)、それを受け取った政党の数が43党。その内、なくなった政党が34党です。国民の税金をもらっておきながら、党を作るのも潰すのもいい加減で、国民の税金が何に役立てられたのか? ということになってしまうので、まさに政党政治の劣化というか堕落が極まった状態だと思うんですよね。だからこういうものはなくすべきだということで、「政党助成金廃止法案」を提出して主張しているんです。

ーー企業・団体献金禁止法案を提出した理由とは?
我々は「企業団体献金廃止法案」を春に提出しました。これはあらゆる献金はダメ。抜け道をなくすということで提出しました。だから、政党であれ政治資金パーティーであれ、全部ダメということにしないと、賄賂性を持っているものだから、そこからいろんな問題が起きてくると。

先ほどお話した通り、個人寄付は、主権者としての国民が政治に参加する権利であり、参政権行使の形のひとつなんですね。それは、憲法上で規定された主権者の権利ですから、とてもいいことなんです。でも企業というのは、営利を目的にする組織・団体でしょう。企業は主権者ではないんです。利益となんの関係もないところにお金を使ったら、株主などから見れば背任行為なので、普通はそういうことは起こらないんですよ。ですから、何かしらの見返りを期待して「政治献金」を企業としてやる。見返りを期待するということは、金の力で自分の都合に合わせて政治を動かすということですから、これは賄賂なんです。企業献金というものは、本質的に賄賂性を持たざるを得ないので「廃止すべきだ」というのが我々の立場です。団体献金に関しても同じです。

ーー政治とカネの問題は、よく話題になります
こういうことが行われてきた80~90年代。90年代に入ると、誰の目から見ても企業献金が腐敗の温床になっていて、これをなくさなければ! まったなしだ! という国民の批判が強まった。その中で、自民党が初めて政権を失うんです。

ときの細川内閣が、政治改革と称して論議して「企業・団体献金を5年後になくしましょう」ということになったんですが、日本の風土の中では個人の寄付というのは定着するのは難しいから、民主主義のコストとして「政党助成金」というものができました。その後を見ていると、企業団体献金は実質的にはなくなっていないんです。実質、二重取りですよね。両方が腐敗の原因だから、いろんなことが起きてくる。

政党助成金がつくられたとき、法律には抜け道がつくられていました。それは、政治家個人への献金はダメだけど、政党に対するものはOKというものでした。だから政治家は、自分が代表者の政党支部をつくって、そこに献金が入ってくるという状況です。

もう一つは、政治資金パーティーと称するものです。これは、企業や団体などにパーティー券を買ってもらうんです。経費はごくわずかで、8割程度は儲けですから、パーティーという形ですが、献金と変わらないものです。総務省が毎年発表していますが、この政治資金パーティーの数は、毎年増えています。これほど便利なものはないということなんですよね。以前は、閣僚になった人は自粛するという申し合わせがあったんですけどね。
<Part3に続く>


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小窓(ペンネーム):Web編集者など
20歳頃から出入りしていた編集部から声をかけられたことをきっかけに雑誌編集者となり、Web編集者に転じる。その後、ひょんなことから取材活動を始める。現在、政治を勉強しながら執筆活動など。猫2匹と同居中。


編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2015年12月18日の記事『「ぶっちゃけ、赤旗の収入なんですか!?」共産党が政党助成金なしでも存続できる理由を聞いてきた <Part2>』を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。なお、アゴラでは寄稿者は原則実名制とさせていただいていますが、今回は配信元が身元確認の上、契約している筆者であること等を考慮し、匿名原稿を掲載しました。ご了承ください。