キンコメ高橋容疑者は依存症?本質的な議論を --- 田中 紀子

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▲高橋容疑者のツイッターには逮捕後厳しいレスが相次ぐ(アゴラ編集部)

衝撃が走った、人気お笑いコンビ、キングオブコメディの高橋さん逮捕。
なんでも高校に忍び込み、部活などで着替え中の生徒の制服を盗んでいたとか。
しかも20年前からやっていて、自宅からは600枚の制服が出てきたそうです。

現役の人気芸人が逮捕されたことも驚きですが、何よりもその内容に、びっくりしましたよね。

この事件に対し、早速芸人仲間からは批判のコメントが上がったようですが、私たち依存症に関係するものなら、「性依存症かな」ととっさに考えますよね。

FBにUPしたら「クレプトマニア(窃盗症)かも?」と、見解も頂き、そちらの可能性もある、もしくはクロスアディクトかな?と、思考をめぐらす所ですよね。

教育者である尾木ママから、ヒステリックなコメントが上がったのには
とても残念です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151226-00000243-sph-ent

性依存症について、成育歴やトラウマについて、もう少し学んで欲しいですね。
ファンだっただけにがっかりです。

確かに、あまりに驚きの内容に、ニュースとしては格好のネタとなるでしょうけど、こういう時こそ、マスコミさんは事件の本質に触れた報道を心がけて欲しいです。新聞までもが、いかがわしい雑誌のようにスキャンダラスに取り上げるのではなく、何が彼をそうさせたのか?

是非、依存症の可能性について触れて欲しいです。

興味を持って、逮捕された高橋さんについて検索した所、彼のお母様は彼が小学校5年生の時に自殺されているとのこと。

また、お父様は事業の失敗などから多額の借金を抱えた上、競馬や、女性にお金を使ってしまうようで、こちらの記事に、ため息まじりにお父様のことを激白されています。
http://www.cyzo.com/2010/12/post_6136.html

この成育歴を聞くと、益々依存症の可能性を感じますよね。
11/28に行った、フォーラムで佐藤拓先生が「トラウマなどの辛い経験を忘れるための自己治療として、依存症を使う場合がある」とおっしゃっておられましたが、依存症者の中には、過酷な成育歴や虐待、トラウマという、大きな心の傷を隠すために、新たな傷を必要とし、依存症になってしまう人達がいます。むしろそういう人達の方が多いかもしれません。

こういうことを書くと、「生い立ちが不幸でも立派に成功した人はいる!」と精神論を語る人が必ずいますが、成功していても依存症かもしれません。

また、確かに生い立ちが過酷でも、現在メンタルの問題が何もない人もいるのかもしれません。
でも例えそういう人がいたとしても、そうできない人を責めることはできません。
脳の構造や体質などは人それぞれで、その人のせいではないからです。

事件の性格上、高橋さんが法で裁かれることは致し方ないでしょう。
けれども彼に今本当に必要なことは、刑務所に入って刑期を務めることではなく、依存症の治療やカウンセリング、そしてお母様が自殺された時の衝撃や悲しみを癒す、グリーフワークなどだと思います。

人の脳の仕組みはまだまだ解明されていない謎が多く秘められています。
脳の仕組みの中には、とても大きな衝撃を受けた際に、依存症のスイッチが入ってしまう、不思議な仕組みがあることを、どうか理解して欲しいと思います。

想像してみて下さい。
小学校5年生の時に、あなたのお母さんが亡くなってしまったとしたら?
そしてそれが自殺だったとしたら?
あなたはその悲しみを受け止められるでしょうか?

脳みそは、受け止められない悲しみを、それでも人が生き延びるために、理解しがたい方法を取ることがあるのです。

また、日本の社会に必要なのは、なんと言っても再チャレンジを認める風潮。
彼が、罪を償った先には、社会復帰の道を、みんなで応援してあげられるような、そんな日本であって欲しいと思います。

くれぐれもスキャンダラスに走ることなく、この問題の本質が語られることを願っています。
そしてギャンブルや性依存症といった行動依存症について、社会の理解が深まる機会となりますように。

そして依存症に理解のある弁護士さんをつけてあげて欲しいと、心からお願い申し上げます。


編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2015年12月27日の記事「キングオブコメディ高橋さん逮捕・・・です」を転載しました(見出し、本文の一部をアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。