2016年展望 世界編

明けましておめでとうございます。ここバンクーバーは気温が氷点下でピリッとした寒さですが、好天に恵まれています。

さて、ちょうど1年前の正月ブログに於ける2015年世界展望では「ディフェンスに力点」「世界の紛争の種や石油価格下落への対応」であり、「世界が地域的、思想的に分離しやすい」と記させて頂きました。

2015年を通じてその流れはほとんど変わらず、2014年来の問題をそのまま引きずった一年でもありました。あえて言うなら進ちょくがあったのはギリシャ問題ぐらいでしょうか?むしろIS問題や石油価格下落は更に悪化の一途で世界がそれに振り回されてしまいました。

2016年はどうでしょうか?私はゲームチェンジャーの年と考えています。つまり、この1-2年のトレンドが逆転するというものです。

最大のチェンジャーはアメリカの大統領選だと思います。私は11月に誰が選ばれるかよりアメリカ国民や世論がリーダーとはどうあるべきか、という議論と時代のトレンドが映し出す世相がキーになると思っています。特に共和党の候補者選びをどう展開するのかであります。国民世論がより保守になりモンロー主義に戻るのか、世界のリーダーとして君臨し続けたいのか、大きな岐路だと思います。

ただ、アメリカの最近の映画作品などに代表されるように「懐古主義」で過去の栄光にすがるようだとアメリカが覇権を握り続けるとは思えなくなります。つまり私にとっては「ジェラシック・ワールド」のヒットや「インデペンデンス・デイ」の続編は失望でもあります。

これはIS等のテロ問題の展開次第だと思います。再び、重大な事件が複数起きるようならばアメリカ国民は保守の気持をより高めそうです。つまり、トランプ大統領が絶対にないとは言い切れなくなります。

ではIS潰しは成功するのか、といえばイスラム国のせん滅は可能だとしても原理主義や極端な思想の人々、そしてその少なからずの人数が欧州から流れてきているとも言われる中、どこに潜伏し、何処で事件を起こすか分からない恐怖は簡単に消えるものではないでしょう。ニューヨーク、ロンドン、パリ、マドリードといった大都市で起きたその事件の根っこは深く、簡単ではありません。

私が気にする2016年最大の想定外はTPPだと考えています。つまり、相当苦労する気がします。理由はアメリカの大統領選のいいおもちゃにされるだけでなく、TPPが内包する「人の移動」の部分に懸念が生じそうな点であります。テロが頻発するならば国家はドアを閉めたいわけですが、TPPはその真逆を行きます。批准できるのでしょうか?仮にアメリカ国内批准に暗雲が立ち込めればカナダはもっと厳しくなります。ほかの一部の国も同調する可能性はあります。このところ、話題にもならなくなりましたがこの春のメインテーマになりそうです。

資源価格の話題にしましょう。私は2016年は底打ち、反転とみています。まず、悪役の一つ、銅は生産調整が世界で始まっており、一部では契約金額に上昇するものも表れてきています。次いで石油ですが、サウジはそろそろ我慢が出来なくなると思います。国家予算の穴埋め、そしてそれをするために世界中の資産を次々売却するシナリオはルーザー(Loser)そのものであります。

それと資源価格全体に影響するのがドル相場です。ドルは利上げの方向性が長く示されたことで市場では必要以上に買い上げられました。2016年はその反動で調整に入るとみています。一方、悪役のユーロと円は経済回復が進み、強含みと見られています。為替はシーソー上のバランスですのでアメリカが今後もゆるりと利上げをしてもそれ以上にユーロと円が強くなればドルは相対的に売られる点を忘れてはいけません。

仮にドルが安くなれば資源価格は上昇します。これは新興国には恵みの雨。中国経済にもプラスに働きます。

このあたりがゲームチェンジャーの主な顔ぶれではないでしょうか?

2016年は先進国のリーダーシップが問われる時代になると思います。かつてはBRICSであったり、中国であったりしたのですが、そのバトンは日米欧に回ってきそうです。ドイツは嫌な2015年でしたが底力はあります。アメリカは「東部エスタブリッシュメント」から「西部開拓」の時代によりシフトするでしょう。サンフランシスコやシアトルから生まれるトレンドがアメリカに強く影響を与えそうです。それはアジアとのゲートウェイであることにも意味があります。今は西部の人が東部時間に合わせて仕事をしますが、将来は東部の人が西部の時間に合わせて仕事をするようになるかもしれません。

2016年はスイッチの切り替わりの際に大きな衝撃を伴うかもしれません。シートベルトはしっかり締めて新しい年に臨んだ方がよさそうですね。

明日は日本編をお届けする予定です。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 1月1日付より