アパホテルは他のホテルチェーンと何が違うのか? --- 内藤 忍

アゴラ

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最近、国内のホテルの予約が取りにくくなったと、多くの人から聞くようになりました。宿泊料金も急騰しているようですが、その象徴となっているのがアパホテルです。

2016年1月5日の日本経済新聞電子版にそのアパホテルの特集記事が掲載されています(図表も同記事から引用)。業容を急拡大しているホテルチェーンですが、記事を読んでみて、その特徴は次の3つに集約されると思いました。

1.コストの削減による高収益の実現
通常14平方メートル程度が標準のシングルルームを約11平方メートルに統一することで、空調や照明のコストを削減しているそうです。また昨年から室内に宿泊客がいても、数時間たつとエアコンが止まるシステムを試験導入して、さらにオペレーションコストの削減に注力していると報じています。

2.宿泊料金の機動的変動
具体的なデータが示されている訳ではありませんが、アパホテルでは各ホテルの支配人に宿泊料金の価格設定に関しかなり大きな権限が与えられているそうです。「アパなのに2万円」といった、高価格に対する不満が聞かれるのは、繁忙期に機動的に価格を上昇させて利益を極大化することができる、現場への権限移譲にあるような気がしました。

3.所有するホテル経営
同社の創業は分譲マンションビジネスから始まった。その利益を償却するためにホテルを所有するという今のビジネスモデルが作りあげられたようです。他のホテルチェーンが「所有と経営の分離」に動いているのに対し、「所有に固執」する異色のホテル経営になっているようです。

アパホテルが、このまま業容を拡大し続けるとどうなるのでしょうか。成長の足かせとして、借入の制約と人材不足という2つの限界に突き当たる可能性があると思いました。

そんな、資金力により自社運営の限界を打破するためにフランチャイズ施設も増やしているようですが、直営に比べサービスクオリティにバラツキが出るリスクがあります。また、人材不足のまま業容を広げれば、それもサービスの低下や顧客満足度の低下につながりかねません。

所有にこだわるホテル経営というと、かつての西武鉄道のプリンスホテルを思い出します。アパホテルには今まで一度も宿泊したことはありません。記事で読むだけではなく、本当にどんなサービスを提供しているのか、機会があれば大浴場施設の付いたホテルに泊まってみたいと思っています。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。