普通選挙って公平なの?

2016年01月14日 12:02

選挙権が18歳以上に引き下げられ、今年の参議院選挙から実施されますが、定数是正はいっこうに進みません。参議院の「1票の重み」は最大5倍も違う状態です。これは「違憲状態」という判決が何度も出ましたが、選挙は無効とはされませんでした。しかし1票の格差が完全に是正されて「1人1票」になったら、選挙は公平になるのでしょうか?

候補者の政見を聞いて勉強して投票する人も、近所の人に頼まれて何も知らずに投票する人も1票というのは変ですね。近代初期にできた議会は身分制で、有権者も貴族と高額納税者だけだったのですが、だんだん「すべての人に選挙権を与えるべきだ」という意見が強くなって、20世紀には1人1票の普通選挙になりました。

しかし女性にも選挙権を与えてから、大衆に迎合するポピュリズムがひどくなりました。女性に初めて参政権を与えたドイツのワイマール憲法では、ヒトラーが出てきました。彼は「大衆は女のように感情で動く」と公言し、女性にもてるために独身を通しました。

もちろん女性がすべて感情で動くというわけではありません。もっとやっかいなのは特殊利益で動く人々です。国民が国会議員を選挙するのは税金の使い方を決めるためですが、日本国民のうち、約2000万人が所得税を払っていません。年金や生活保護などの形でお金をもらう人の比率は人口の25%以上です。

政治家に補助金などのロビー活動をするのは、こういう税金を使う人ですから、日本の政治は税金をもらう人のための政治になっているのです。だから政府の借金が1000兆円を超えても、安倍政権は財政改革をしません。野党も投票者の半数を超えるお年寄りの票がほしいので、社会保障には手をつけません。

これは投票者の多数を占めるお年寄りの選ぶ政治家がお年寄りのために税金を使っているわけだから、多数派のいう通りに政治が行なわれるという意味では「民主的」だといえます。しかし納税者が税金の使い道を決めるという民主政治の本来の目的とは逆になっているので、税金の無駄づかいに歯止めがかかりません。

さらに大きな問題は、今の18歳以上だけで政治を決めていいのかということです。今の莫大な政府の借金を返すには、50年以上かかります。そのとき国の借金を使った世代は死んでいて、彼らの使った金を税金で返す人の多くはまだ生まれていません。本来は、今の政府債務を返済する世代も含めて選挙をやらないと不公平です。

少なくともいま18歳未満の子供にも、選挙権を与えるべきです。もちろんゼロ歳児に判断力はありませんから、子をもつ親に子供の数を足し、たとえば2人の子をもつ親には3票を与えればいいのです。これはドメイン投票といって30年ぐらい前から提案されていますが、実現しません。

このように普通選挙という制度は「すべての人間は等しく理性をもつ(べきだ)」という啓蒙思想の理想によってできた制度で、普通でも公平でもありません。日本の劣化した政治を建て直すには、もっと合理的な選挙制度を考える必要があります。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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