ネットで音楽の接し方はどう変わったの?(前) --- 中村 伊知哉

2016年01月21日 12:30

アルハンブラ
東独・ドレスデン郊外にあるピルニッツ宮殿。庭で男がギターでトレモロを奏でる。「アルハンブラ宮殿の思い出」です。スペインのコスタ・デル・ソルにあるアルハンブラとこことは何の関係もありません。が、この曲には足が止まります。小学校低学年のころ、サントリーのTVCM、オールドだっただろうか、この曲が流れていました。いつかこれを弾いてみたいと思いました。

中1でガットギターを手にしました。中2、NHK教育テレビの荘村清志さん「ギターを弾こう」を貪り観ました。だけどアルハンブラしか練習せず、何とか弾けるようになり、クラシックギターはそれっきりです。

そんなことはいい。Spotify上陸など音楽のネットサービスが賑やかな今、ぼくのようなアナログ野郎がどんな音楽体験をして、今のデジタル野郎がどんな体験をしているのか。デジタルは、音楽体験をどう変えるのか。3回に分けて考えてみたい。

ぼくはどんなアナログ音楽体験をしてきたのか。誰も興味がないと思うので、小文字にしておきます。

ラジオ。九死に一生を得た交通事故での入院中、隣の部屋がつけていたラジオで「帰って来たヨッパライ」が繰り返し流れていた。オラは死んじまっただ、というのを貪り聴いた。小1。

テレビ。オバケのQ太郎以降70年頃までのアニソンがだいたい歌えるのも、GSや昭和歌謡を歌えるのもテレビのおかげ。AMとテレビが音楽への入口だった。

レコード。小6のとき、近所の兄ちゃんがグランドファンクレイルロードの後楽園ライブとCCRのベスト盤をくれた。洋楽はそこから入った。その2枚を元に友だちからビートルズや岡林信康やストーンズや加川良やツェッペリンを借りて、広がる。

中2、家に8トラが来た。ソフトは軍歌と60年代前半までの演歌と映画サントラの3本だけだった。音がビヨンビヨンになるまで聴いた。

中2、FM大阪で荒井由実2枚目「ミスリム」の発売に度肝を抜かれた。岡林信康のバックで弾いていた細野晴臣さんという人のベース。入口はFMになっていた。

高2、河原町二条にできた古着屋でかかったセックスピストルズ「アナーキー・イン・ザ・UK」に度肝を抜かれた。何か自分に近いものが来た、と思った。

大学でもレコードの流通は音楽消費の柱だった。同級生の下宿で夜通し聴いたPhewのシングル盤「終曲」。川上先輩(Dr.Kyon)の部屋で聴いたタンゴ藤沢嵐子「CAMINITO」。西部講堂の裏でコンチネンタル・キッズの しのやんが聞かせてくれたブリジット・フォンテーヌ「ラジオのように」。どれもぼくの人生を変えた。

テープ。レコードよりエアチェックや録音テープの交換が増えた。高校の後輩が貸してくれたP-MODELにうずいた。自分も何か動かなあかん、と思った。発売間近、初代ウォークマンを京都のソニー販売店で聴いて、飛び上がった。常に持ち歩く初めての機械になった。

大学に入ると、ライブが音楽の入口となった。ローザルクセンブルクのどんとが教えてくれて大阪に見に行った少年ナイフ。京大教養キャンパスで見た町田町蔵のINU。ふらりと同志社をたずねて見た ほぶらきん。いつも寝転がってラッパふいてる近藤等則先輩。余録ながら、西部講堂でのポリス事件もあった。

80年代に入り、貸レコード屋が登場。興奮して梅田に通った。レコードのダビングと知人間の流通に拍車がかかった。カラオケが普及し、世間ではこんな歌が流行っているのか、ということを、酒場で共有することにもなった。

そこまでが、アナログ。上京し、就職したとたん、音楽はデジタルに変身します。
CD、MD,iPod。Napster、iTunes、YouTube、DVD、スペシャ。着メロ、着うた、着うたフル。そしてサブスクリプション。Spotify、AWA、LINE MUSIC、Apple music、Google Play Music・・・。

ぼくは音楽を大量消費して、携帯するようになりました。映像との接点も増えました。だからといって、音楽との距離や深みがさほど変わったわけではありません。関わりができあがり、凝り固まっていたからでしょう。

そのあたり、デジタル世代、ネット世代はどうなのでしょう。サブスクリプションの登場をどう占えばよいでしょう。
このあたりは、ウチの学生どもに後ほどじっくり聞いてみましょう。
(つづく)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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