【映画評】俳優 亀岡拓次 --- 渡 まち子

2016年02月04日 11:30



37歳独身の亀岡拓次は、脇役一筋の俳優。小さな役もこつこつと演じ、文句も言わず淡々と仕事をこなすので、仕事が途切れることはないが、私生活は安い居酒屋で一人酒を飲む地味な生活を送っている。そんなある日、亀岡は長野ロケで訪れた飲み屋の女将・安曇に恋をする。今までやらなかった舞台の仕事に挑戦したり、世界的巨匠からオーディションの声がかかったり。亀岡の人生に大きな転機が訪れようとしていたが…。

地味な脇役俳優に訪れた恋とチャンスを描くハートフル・ドラマ「俳優 亀岡拓次」。監督は、独特の感性で話題を集めた「ウルトラミラクルラブストーリー」以来6年ぶりの長編作品となる俊英・横浜聡子。物語の主人公は、監督から名前すら憶えてもらえない地味な脇役俳優である。撮影現場やロケ、売れない俳優たちのリアルな会話など、まさに映画あるあるで、作品全体に映画愛があふれている。実際、亀岡拓次というキャラはつかみどころがない。目立たずさりげなく周囲に気を使うが、本心は読めない。演じる安田顕は、映画、舞台、バラエティーとひっぱりだこの俳優だが、この人もまたカメレオン俳優。名バイプレイヤーと呼ばれる彼は、全国規模公開映画としては、本作が初めての主役なのだ。

役と俳優のイメージがいい意味で混濁した結果、次々に自分以外のものになる俳優という稀有な職業の虚実を浮き彫りにしている。監督や大女優を演じる、ベテラン、若手俳優たちが、これまた良い。業界ものとして見ても面白いが、全員が主役ではなりたたない世の中の、脇にいる人間を応援しながら、それでも誰もが主役になれる瞬間が来ると励ましてくれる作品だ。作り手のまなざしは、クールにして優しい。雨の中、バイクで疾走する亀岡、砂漠をさまよう亀岡。映像もなかなか鮮烈で記憶に残った。
【65点】


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年2月3日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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