10年国債の落札利回りが初のマイナスに --- 久保田 博幸

2016年03月02日 12:22

3月1日の10年国債入札では落札利回りが初めてマイナスとなった。この10年国債入札は毎月初めに、年間で12回実施される。償還日は3月から5月に発行されたものは10年後の3月20日、6月から8月発行分は同6月20日、9月から11月発行分が同9月20日、12月から2月発行分が同12月20日となる。10年国債は償還日が同じ物は前回に比べて利回りが0.2%以上変動しないと同じ回号の国債が再発行される仕組みとなっている(リオープン)。

今回は3月発行なので2月発行のものとは利回り水準とは関係なく償還日が異なるため新発債となる。この場合の利率の設定は、2月債の利回りやWIと呼ばれる国債の発行日前取引の利回りが参考にされる。入札日の前日、2月29日の直近発行された10年債である341回債(利率0.3%)はマイナス0.075~マイナス0.060%あたりでの値動きとなっていた。WIは出合いはなかったものの気配はマイナス0.040%/マイナス0.030%となっていた(償還が3か月長くなるとその分利回りは通常は上昇する)。

10年国債の流通市場での利回り水準はゼロ以下となっていたが、利付国債の入札における最低利率は0.1%に設定されている。このため利率がゼロやマイナスということにはならない(これはすでにマイナス金利で落札された2年債や5年債も同様)。今回の10年国債の利率は10年債としては初めて過去最低の0.1%に設定された。

ただし、実勢利回りがマイナスとなっている以上は、落札利回りもマイナスになることが予想され、それは価格で調整される。1日の10年債入札は最低落札価格101円16銭(マイナス0.015%)、平均落札価格101円25銭(マイナス0.024%)と最高落札利回り、平均落札利回りともに10年債としては初めてマイナスとなった。最低落札価格は予想を下回るもテール(平均と最低落札価格の差)は9銭と前回の14銭から縮小し、応札倍率は3.20倍と前回の3.14倍をやや上回るなどまずまず無難な結果となった。

それでは誰がこのマイナス金利の国債を購入するのか。ロールダウン効果等も意識された国内投資家の買いが全くないわけではなかろうが、主な購入先は業者を通じた日銀となろう。日銀はマイナス金利でも買いオペで購入するため、プライマリーディーラーを中心とする業者はそれを意識して応札する。プライマリーティーラーは一定比率の応札・落札が義務づけられている。また、一部外銀なども購入する可能性はある。

ただし、注意すべきは3、6、9、12月という国債の償還月に限っては10年国債の発行日が2営業日後ではなく通常は20日となる点にある(ただし今月の20日は休日なので22日)。日銀は発行日前の国債買入はしないため、日銀が今回の新発10年国債を買い入れるのは早くても18日約定分となる。このため今日入札した業者はそれまで新発債を保有しなければならない。その間、業者は保有する国債へのリスクを負うことになることも注意したい。

顔写真201011
久保田博幸(くぼた ひろゆき)
1958年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学法学部卒。
証券会社の債券部で14年間、国債を中心とする債券ディーリング業務に従事する傍ら、1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。専門は日本の債券市場の分析。特に日本国債の動向や日銀の金融政策について詳しい。現在、金融アナリストとしてQUICKなどにコラムを配信している。また、「牛さん熊さんの本日の債券」というメルマガを配信中。2015年まぐまぐ大賞で資産運用部門第2位を受賞。日本アナリスト協会検定会員。

主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」すばる舎、「短期金融市場の基本がよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

「債券ディーリングルーム」http://fp.st23.arena.ne.jp/
「牛さん熊さんブログ」 http://bullbear.exblog.jp/

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年3月2日の記事を転載させていただきました。転載を快諾くだいました久保田氏に心より御礼いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。


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