次世代の知財システムとは?

知財本部・次世代知財システム検討委員会。
新しいスキームの委員会が始まりました。こちらも座長を務めます。

しかし。KADOKAWA川上量生さん、福井健策さん、赤松健さんらとIoT/AI時代の知財問題を検討するというパンクな会議です。

事務局が「どうなることやら」とつぶやく会議です。
その座長を無事務め上げる自信はありません。

この委員会の根拠は知財計画2015という政府決定。
「AIや3Dプリンティングなど新技術を踏まえ、新時代の制度を検討する」と明記されたんです。
安倍総理も「しっかり取り組む」と宣言されたんで、本気で取り組むこととあいなりまして。

事務局=政府が整理したのは、

1) ビッグデータ
2) AI
3) IoT

という3つの技術変化を背景とし、

1) 新ビジネス創出
2) 新技術対応
3) 国際的知財侵害対応

の3つ課題を解くというもの。

この5年の「ソーシャル化=スマホ+クラウド+ソーシャル」の次の波が来ることを受け、知財問題をどうとらえるかという問いです。

TPP合意を受け、著作権保護期間延長+非親告罪化という制度対応を目の前に迫られています。これはこれでケリをつける同時に、その後に残る課題がある。フェアユース、アーカイブ構築、プラットフォームなど。
さらに、IoT/AIで生まれてくる課題がある。

これら全てひっくるめて、何が課題かを論じます。

この議論は角川会長主導で進めた「IP2.0」が契機になっていて、民間でのとがった議論に政府が呼応した形です。
国際的にみてもこういう議論を政府が進めるのは異例でしょう。
世界の先を行く議論をたたかわせたい。

「IP2.0、始動。」
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/03/ip20.html
http://ichiyanakamura.blogspot.jp/2014/03/ip20_24.html

会合では、「長期的には知財・著作権制度は崩壊する」という見通しが委員たちから示される中、5年程度を見越した経済政策を考えようという議論がなされました。

その上で、データベース保護、フェアユース・登録制、アーカイブ構築、プラットフォーム規制、AI振興といった論点が提示されました。

刺激的な意見の中でも、川上さんのコメントが耳に残ります。
「長期的な政策には、罪がない。
中期的な政策は、まとまらない。
短期的な政策は、実現しない。」

うぇ~ん。がんばる。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。