財政ファイナンスって何?

2016年04月01日 06:30

日銀の黒田総裁が、国会で共産党の質問に対して「大規模な国債買い入れの狙いは2%の物価安定目標を早期に達成するためであり、財政ファイナンスと誤解されるおそれはない」と答えましたが、財政ファイナンスって悪いことなんでしょうか?

財政ファイナンスは、マネタイゼーションとも呼ばれ、国債を日銀がすべて引き受けて現金化することです。日銀引き受けは財政法で禁じられていますが、国会が決議すればできます。

今は日銀は市場から買っているので、形の上では日銀引き受けではありませんが、市場で流通する国債のほとんどを日銀が買っているので、実質的には財政ファイナンスだと、日銀審議委員の原田泰さんも認めています。

財政ファイナンスが悪いのは、政府がいくらでも借金できるようになるからです。これが「財政が破綻した」と市場に受け取られると、金利が上昇して国債が暴落し、それを買って日銀がどんどんお金を発行すると、ハイパーインフレが起ります。

世の中には「インフレ目標で止められる」などという人がいますが、インフレ率2%で日銀が引き受けをやめると、国債がデフォルト(債務不履行)になってしまうので、インフレ目標なんて意味がありません。

しかし今は世界的にマイナス金利になっているので、ハイパーインフレの心配はないでしょう。では、日銀がいくら国債を引き受けてもいいんでしょうか?

キャプチャ
日本の人口推移(出所:国立社会保障・人口問題研究所)

図のように、日本の生産年齢人口は1990年代から減り始め、2060年には人口の半分になってしまいます。つまり働く人ひとりで、お年寄りなどの働かない人(従属人口)をひとり養わなければならないわけです。

現役世代の国民負担率(税+社会保険料)は、国債の残高が今のままとしても、2050年には所得の65%になりますが、今のペースで国債の発行が増えると2020年ごろには個人貯蓄を超え、外債を募集するので金利が上昇すると予想されます。だいたい2030年ごろには国民負担率が60%を超え、財政が行き詰まるというのが、多くの財政学者の予想です。

いま増税しないで国債を日銀が引き受けると、こうした負担は今の世代には発生しませんが、将来世代の国民負担は激増します。今の世代が使ってしまった借金を、みなさんが税金で返さなければなりません。

これは浜田宏一さん(内閣官房参与)も認めるように、おじいさんが子供に、子供が孫に借金するネズミ講のようなものです。これは人口がネズミのようにどんどん増えていると続けることができますが、働く人が半分になると、みなさんの負担はおじいさんの2倍になるので必ず行き詰ります。

だから本質的な問題は、金利が上がるとかハイパーインフレになるということではありません。そういうことが起らないとしても、今の世代の借金は将来世代の増税になるということなのです。今のまま財政規模がふくらんでいくと、消費税率は30%以上になります。

しかも普通の借金は、借りる人と貸す人の契約がないとできませんが、財政ファイナンスでは政府が一方的に借金を決めて日銀が金を貸し、それを税金で返すみなさんの世代には選挙権もありません。これが民主主義といえるんでしょうか?

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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