面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えする好評連載「ダメ面接官の10の習慣」。第6回のテーマは「ダメ面接官はあっさりしすぎている」です。
※本記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」からの転載PR記事です。
日本では「しつこい」会話は嫌われる!?
「ハイコンテクスト」という言葉をご存じでしょうか? 抽象度が高いことを意味する言葉で、ハイコンテクストな社会といわれる日本は諸外国と比べて、一から十まですべて伝えなくても「あうんの呼吸」で会話が成立することが多いといわれています。逆をいえば、細かなところまで質問を繰り返す「しつこい」会話を続けてしまうと、相手にあまり良い印象を持たれないことが多い、ともいえます。
候補者は無意識に発言を「ぼかす」
多くの日本人がそのような「ハイコンテクスト」な日常に慣れているせいなのでしょうか。採用面接でも、曖昧な発言をする候補者は少なくありません。たとえば、中途採用面接で「前職(現職)ではどんな仕事をされていましたか?」と質問すると、「営業です」と返ってくるようなケース。私の経験上、かなり多く見受けられる発言ですが、この言葉だけでは面接官が得られる情報が少なすぎます。「メーカーなのか、ITサービスなのか」「企業向けなのか、個人向けなのか」「対面なのか、非対面なのか」など、候補者を評価するために必要な具体的情報が何一つありません。自分をアピールする場で具体的な話をしない候補者に問題があるのはもちろんですが、だからといって、そのような面接で終えてしまうようでは、あなたもダメ面接官です。
特に新卒採用や20代の若手採用では、候補者から聞くエピソードは似たようなものばかりです。語られるエピソードがどのくらいすごいのか把握するためには、面接官は詳細を聞き出す必要があります。
面接官は「しつこく」なければならない
そのため面接官は、日常会話とは違って、「しつこい人」になるべきです。候補者が「営業です」といってきたら、流してしまわずに、必ず「どんな営業なんですか?」と聞くのです。それでもまだ「メーカーです」といった具体性の乏しい返事をする候補者もいるでしょう。その場合はさらに「どんなメーカーですか?」としつこく聞きます。それでもまだ「外資系の電機メーカーです」などという返事なら、さらに「どのような製品を扱っていますか?」「担当エリアは?」「扱っていた売り上げ規模は?」と掘り下げていくのです。すると、その候補者が話題の家電の営業担当だったことがわかり、その製品を売るために取り組んできたことが評価できるものだとわかってきます。
ここまで極端に答えない候補者はさすがに少ないと思いますが、あくまで例ですのでご容赦を。このように、面接官は質問を繰り返して話を深く聞いていかなければ、候補者の話すエピソードのレベル感を知ることができません。面接官は「しつこく」なければならないのです。
「固有名詞」や「数字」にこだわって聞き出す
ディテールを聞き出す際のポイントは、「固有名詞」と「数字」です。まず、なぜ「固有名詞」を聞き出すべきかというと、固有名詞には多くの情報がひもづいており、候補者の人となりを判断するのに役立つからです。前述した例でも、話題の家電の営業担当だとわかればイメージが広がります。候補者から「IT業界を志望している」と聞くよりも、さらに自社以外に応募している企業が「サイバーエージェント」か「NTTデータ」かまで聞けたら、候補者の志向性が見えてくるはずです。曖昧な回答は、固有名詞が出てくるまでできる限り掘り下げるべきです。
「数字」は候補者のレベル感を知るのに大変重要な要素です。「大きな店」ではなく「何席あったのか」、「難しい試験」ではなく「何%の合格率だったのか」、「長いあいだ」ではなく「何年何カ月やってきたのか」を聞かなければなりません。また、業績数字については、「何件やった」という事実だけではダメで、「平均的な数字と比較してどうだったのか」まで聞かなければ、評価はできません。
嫌われずに「しつこく」なるには
このように、面接官はあっさりしていてはダメで、しつこくなければなりません。しかし、冒頭に述べたように、「しつこい人」は日本の社会では嫌われやすい存在です。どうすれば嫌われずに「しつこく」なれるでしょうか。
当たり前の話で恐縮ですが、まずは、しつこく聞いても嫌われないように、良い雰囲気を作ることです。「笑顔を絶やさず、肯定的な雰囲気を維持する」「いきなり質問から入るのではなく、最初は相手の緊張をほぐすようにアイスブレイクできる話題(天候など)から入る」「話のあいだに、相手にわかるようにあいづちを打つ」「自分だけ質問して終わるのではなく、候補者にも質問の時間を与える」などです。
それから、しつこく質問を重ねるうえで、気を付けるべきは「なぜ」という言葉です。「なぜ」は日本語では否定の意味で使われることも少なくないため、「なぜそんなことをした=そんなことをしてはダメ」といったニュアンスで伝わることがあります。「なぜ」の問いを何度も繰り返すと圧迫面接のようになりかねません。「なぜ」の代わりに「理由は」「きっかけは」「原因は」「背景は」「由来は」など別の表現で問いかけて、詰問調にならないよう留意することも重要です。
面接の場の雰囲気や候補者に与える印象に十分注意し、「しつこい」面接官になって、候補者の人となりをしっかりと把握するよう努めてください。
著者プロフィール: 曽和 利光 氏
リクルート、ライフネット生命、オープンハウスと、業界も成長フェーズも異なる3社の人事を経験。現在は人事業務のコンサルティング、アウトソーシングを請け負う株式会社人材研究所の代表を務める。
編集:高梨茂(HRレビュー編集部)
編集部より:この記事はビズリーチ運営のオウンドメディア「HR review」の人気連載「ダメ面接官の10の習慣」の記事より転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。
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