IEA:ドーハ会議合意の影響は軽微

注目のOPECとIEAの2016年4月月報が4月13日、14日と相次いで発表された。

2016年の世界全体の石油需要の伸びについて、珍しく両機関が「120万B/D増」との予測で足並みを揃えた。OPEC月報によると、2015年の9298万B/D実績に対し、2016年は9418万B/Dになるとしている。1.29%の増加である。

読者のみなさんに留意してもらいたいのは、このように需要増は予測されているが、両機関とも「2016年は供給過剰が継続する」と見ている点である。だから、本ブログのタイトルのように、ドーハ会議で産油国が合意できたとしても影響は軽微、との判断になるのだ。

今週末の17日(日)、OPEC、非OPECの主要産油国がカタールの首都・ドーハに集まって、「生産凍結」合意に向けての協議が行われる。

日本の報道では「増産凍結」という表現が使われているが、どこから「増産」という言葉が出てくるのか、筆者は不思議でならない。協議の対象は、「生産」の凍結であり、2月中旬の条件付き暫定合意は「1月生産水準での凍結」だった。今回の協議にあたって、もはや「1月」を使用する意味はないので、おそらく「3月生産水準での凍結」が前提になるだろう。3月のOPECとロシアの合計生産量は1月合計より少ないから、実質的影響はないだろう。

IEAは、ロシアもサウジもほぼ生産能力ぎりぎりの生産をしている、と判断している。

つまり、筆者が本ブログでも指摘しているとおり、余剰生産能力がほぼなくなっているのだ。

なお、IEA月報によると、サウジの3月生産量は「微減」の1020万B/Dだった。補助金削減の影響が出ているのだろか。

今朝流れているFT電子版の記事 “IEA discounts impact of oil production freeze” (Apr/14 2016, 4:23pm)の要点は次のとおりだ。

・今回の協議は、2014年末から続く価格下落の中で、OPECおよび非OPECの主要産油国が、初めて協調して対応しようとすることに意味はあるが、供給過剰が在庫をさらに積み上げている状況下、心理的なもの以外には実質的効果はないだろう。

・米シェールの減産はようやくはずみがついてきているが、世界全体の需給バランスは2016年の前半は150万B/D、後半も20万B/Dの供給過剰状態で推移するだろう。

・もし需要が堅調なら、2016年後半に需給がバランスする(リバランスが達成される)可能性もあるが、そのことはすでに市場に織り込まれている。ブレントのコンタンゴ(先高)状況は急激に縮小している(筆者注:2016年6月ものと2017年6月ものの値差が約3ドルになっている)。

筆者が関連データを見ている限り、シェールオイルの減産は、昨年春以来、継続している。メキシコ湾における在来型大型プロジェクトからの生産開始があるので、米国全体の原油生産量は微減だが、シェールオイルは減産しているのだ。20153月、4月に560万B/Dのピーク生産を記録したが、最近は490万B/Dくらいになっている。意図的に長期化させているDUC(Drilled but Un-Completed)坑井がどの程度あるのか、興味津々だが把握しようがない。

だが、一時不安視されていた、エクソン・モービルに次ぐ米国第二位の天然ガス生産業者チェサピーク・エナジーも、40億ドルの融資枠の確保に成功したと伝えられており(WSJ:Chesapeake amends credit facility agreement with lenders” Apr/11, 2016 2:53pm)、価格が再び30ドル割れするとの見方は一掃されているようだ。

来週19日(火)の「日経プラス10」(BSジャパン)に再びゲスト出演する予定だが、ドーハ会議で「想定外」のことが起こらない限り、本ブログで報告していることを伝えることで済みそうだな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年4月15日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。