「風刺」はどこまで許されるか

2016年04月17日 11:30

風刺はどこまで許されるか……、このテーマは昨年1月、フランスで起きた仏風刺週刊紙「シャルリーエブド」本社襲撃テロ事件の時も提示された。イスラム教の預言者ムハンマドを風刺した仏週刊紙の本社がテロリストの襲撃を受け、10人のジャーナリストが殺害されたテロ事件だ。その直接の契機は「シャルリーエブド」誌がムハンマドを風刺し、イスラム側の反発を誘発したことだ。

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▲エルドアン大統領を風刺したべ―マ―マン誌(独週刊誌「シュピーゲル」最新号4月16日号の表紙から)

今度はドイツ公営放送(ZDF)の風刺コメディアン、ヤン・べーマーマン氏(Jan Bohmermann)が3月31日、”Neo Magazin Royale”の番組の中でトルコのエルドアン大統領を揶揄った風刺詩(Schmahgedicht)を披露。その内容に怒った同大統領はドイツ側に即抗議すると共に、同氏を名誉棄損で告訴した。

べ―マ―マン氏の風刺「詩」を読んだ。当方はエルドアン大統領の政治には反発を感じる点が多いが、風刺詩はきわどい表現と侮辱に満ち、「言論の自由」の錦を掲げて保護すべき内容とはどうしても思えない。以下、べ―マ―マン氏の風刺詩‘Schmahkritik‘だ。

Sackdoof, feige und verklemmt,

ist Erdogan, der Prasident.

Sein Gelot stinkt schlimm nach Doner,

selbst ein Schweinefurz riecht schoner.

Er ist der Mann, der Madchen schlagt

und dabei Gummimasken tragt.

Am liebsten mag er Ziegen ficken

und Minderheiten unterdrucken,

Kurden treten, Christen hauen

und dabei Kinderpornos schauen.

Und selbst abends heists statt schlafen,

Fellatio mit hundert Schafen.

Ja, Erdogan ist voll und ganz,

ein Prasident mit kleinem Schwanz.

Jeden Turken hort man floten,

die dumme Sau hat Schrumpelkloten.

Von Ankara bis Istanbul

weis jeder, dieser Mann ist schwul,

pervers, verlaust

und zoophil –

Recep Fritzl Priklopil.

Sein Kopf so leer wie seine Eier,

der Star auf jeder Gangbang-Feier.

Bis der Schwanz beim Pinkeln brennt,

das ist Recep Erdogan, der turkische Prasident.

フランスの場合も同じだった。他宗派の宗教指導者とはいえ、それを侮辱し、茶化すことはやはり間違いだ。それは「言論の自由」というより、「言論の暴力」と言わざるを得ない。今回も同様に感じた。べーマーマン氏の詩を「言論の自由」として擁護することには抵抗を覚える。

メルケル首相は15日、刑法(StGB)103条に基づき同氏へのマインツ検察当局の捜査を認可すると表明した。刑法103条では、外国の国家元首に対する名誉毀損事件の捜査にはドイツ政府による捜査権付与が必要と明記されている。

エルドアン大統領はべーマーマン氏を名誉棄損で訴えているから、中傷誹謗を罰した刑法185条に基づきマインツ検察当局が捜査に乗り出すことになる。どのような判決が下るかはもちろん不明だ。ドイツ政府もトルコ政府も司法側の捜査権には干渉できないからだ。

メルケル首相が風刺コメディアンの捜査を司法側に認可したというニュースが流れると、予想されたことだが、ドイツ国内外で批判の声が上がっている。欧州に殺到する難民、移民問題でトルコ側の協力が不可欠だから、メルケル首相はトルコ側の要求に屈した、といった憶測が流れている。その一方、トルコ内で反政府、野党側のメディアを弾圧している張本人が他国のジャーナリストや芸術家にまでその横暴なやり方を広げている、といった批判が聞かれる。

メルケル政権内でも社会民主党のシュタインマイヤー外相やマース司法相はメルケル首相の決定に不満を表明している。同外相は「言論、報道、芸術の自由はわが国の基本法の中でも至上の問題だ」と述べている。

べーマーマン氏の風刺問題では、「言論の自由」論争以上にドイツ国内に住むトルコ系住民の動向が懸念材料だ。今回の件ではドイツ国内のトルコ系社会がエルドアン大統領支持派と反政府派に分かれている。風刺問題がドイツのトルコ系住民内の対立を一層激化する危険性があるのだ。

それだけに、メルケル政権は検察当局の捜査動向に強い関心を持たざるを得ないだろう。風刺コメディアンの「詩」がドイツとトルコ両国政府を巻き込んだ“国家事件”にまで発展してきたのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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