京都3区補選の見所はもはや選挙後→維新党名変更

  • 本編に先立ち、熊本の地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。また、お亡くなりになられた皆様、遺されたご家族の皆様に謹んでお悔やみ申し上げます。

どうも新田です。子供が生まれたら真面目にイクメンやります。ところで、東京では、もはや乙武さんの不倫騒動に上書きされてしまった感のある自民党の宮崎前議員の「ゲス不倫」ですが、彼が辞職したことに伴う衆議院京都3区補選がこの週末、しめやかに投票日をお迎えします。なんですか、この盛り下がり感。北海道5区と様相が異なり、東京の人間から見れば「そういえば、ついでにやっていたんだよね」的な感じで、こっちのメディアでは、もうほとんど話題になっていないのが悲しいところです。

「真田丸」開始と同時に当確?

せめて、自民党が一時期取りざたされた元シンクロ五輪選手を候補者に立て、宮崎氏の尻拭いを果敢にし、選挙区内で石や罵声を投げつけられながら、頑張る様を見せればテレビ的にも「画」になったことでしょうが、早々と不戦敗を決定。いつもはネトウヨを煽りに煽っている京都府連会長の西田昌司センセも日頃の勇ましさは影を潜め、投票日直前になって次期衆院選の候補者決定をしおらしくアピるという、京都3区内の自民党支持者にとっては、もどかしいビミョーな展開になっております。

そうなると、ここを地盤とする民主党・泉健太さんが安定的な戦いぶりを見せるのは自明の理。報道各社すべての世論調査が「優位」と判定。一応、共同通信の情勢調査は「態度未定が5割近く」と留保は付けてはいるものの、2014年の本選で、宮崎氏に入れていた自民票が35%もあり、「迷子」になってしまった層が一定数いると思われること、泉氏の優位が早々と報じられていること、さらに、今回は政治不信も手伝って、選挙に足を運ばない可能性も考えられ、投票率低下が懸念されます。

まあ、そうなったら組織票を持つ「民共」が、無党派層主体の第三極票を圧倒するのは自明の理。もはやこの日曜は、NHK総合で「真田丸」のタイトルバックが出現するのと、泉氏の当確のどちらが早く画面に映るかという情勢ではないでしょうか。

「選挙後」に移る焦点。全国的に注目は維新のリネーム

むしろ、外野から見た、京都補選がらみの政局的な関心としては早くも「選挙後」に移りつつあると思います。その最大の焦点は、この話題です。産経が最初に書いて、他のメディアも取り上げていたんですが、朝日新聞が関西テイストな人情味ただよう選挙サイド記事をアプしております。

京都人に党名「おおさか」響くの? 悩める衆院3区補選(朝日新聞デジタル4月9日)

東京人からは、京都人の大阪に対する微妙な距離感というのは、なかなか分かりづらいんですが、私も新聞記者駆け出しの頃に関西に勤務していたので、各府県間の縄張り意識的な、カルチャーは見聞きしていた分、ちょっとした実感を持って拝読いたしました。

記事を読むと、松井さんが「『おおさか』は、地域の名前じゃない。大阪でやっている改革の象徴だ」とのアピールは苦し紛れなのは明らか。党幹部が井上章一氏のベストセラー「京都ぎらい」を読み込んで研究するあたりは、もう涙ぐましいものがあります。ん?この本、版元が朝日じゃん。選挙記事に本の宣伝を紛れ込ませるとは、ちゃっかりしてるな(苦笑)。

京都ぎらい (朝日新書)
井上章一
朝日新聞出版
2015-09-11

 

 

夏までの「純化路線」が狂った想定外の無理ゲー

率直に言うと、おおさか維新的には、このタイミングでまさか補選があるとは想定しなかったので気の毒な面もあります。おおさか維新の党内事情に詳しい方に年末、参院選の展望を取材した際に聞いたところでは、かつて党勢を急拡大して、石原さんやら、江田さんやらに振り回された反省が強かったそうです。松井さんたちの戦略としては、おそらく夏のダブル選挙までは、「純化路線」を採用して大阪を中心に自前で組織を固め直す戦略を考えていたのではないでしょうか。

まあ、その頃は「偽維新」(Named by 松井一郎)こと、維新の党も存続していましたし、選挙後の情勢変化を見て、党名を「日本維新の会」とか全国チェーンネームに戻すのは、夏以降と考えていたはず。

ところが突然、「ゲス不倫」で自民現職が辞めてしまい、補選が行われることになってしまいました。自分たちの庭先の京都で議席を獲得するチャンスをみすみす逃すわけにもいかず、果敢にも「大阪印」で京都に進撃したものの、もともと泉さんの地盤があり、加えて共産党の金城湯池でもあるわけですから、大阪以外での選挙基盤が弱い維新にとって、このタイミングでの選挙戦突入というのは、さしづめナポレオンのロシア遠征のようなアウエー感まるだしの「無理ゲー」だったのではないでしょうか。

おおさか維新、全国チェーン戦略の仕切り直しの契機に

しかし、災い転じて福となす、といいますか、この選挙戦の結果次第では「大阪ブランド」の限界を真剣に考える契機になるはずです。すでに3月下旬の毎日新聞にはこんな記事が載っております。

「日本維新の会」復活…「おおさか」変更方針(毎日新聞3月27日)

この記事が出た当時はフライング気味でしたが、文末には、参院選前に党名変更を前倒しする可能性も触れており、ますます現実味が増していきそうです。私も維新関係者に探りを入れたところ、その可能性を否定しておらず、むしろ、大阪以外の地域では、党名変更の待望論すら出てきそうな雲行きです。

昨年の大阪ダブル選の圧勝で、改めて内弁慶ぶりを見せつけてくれた、おおさか維新ですが、関東の第三極でみんなの党がなくなってしまった今、マーケットは空いております。その意味では、このチャンスを生かすも殺すも、全国チェーン展開に向けたマーケティング戦略の練り直しにかかっており、昨年末に想定外だった京都の補選が突発したことは、むしろその契機を前倒したとポジに考えていいのではないですかね。

とりあえず、残り2日間、維新全国展開の「人柱」になりつつある森夏枝さん陣営のご健闘をお祈りしております。東京からは以上です。

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新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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