NYで圧勝のトランプ候補、過激発言お蔵入りの真相

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共和党の米大統領候補で、不動産王のドナルド・トランプ氏が19日の地元ニューヨーク予備選(代議員数95人)で予想通り大勝しました。

ドナルド・トランプ 60.4%(89人)
ジョン・ケーシック 25.1%(4人)
テッド・クルーズ 0%(ゼロ)

しかし、ひとつだけ明らかに予想外なことがあったのです。

それは、勝利宣言の言葉遣いにありました。クルーズ候補を「嘘つきテッド(lying Ted)」ではなく「上院議員(Senator)」、ケーシック候補の発音もきちんとできていました。党大会に向け過激発言をお蔵入りし、イメージ刷新を図ります。

最近、トランプ候補の選挙対策委員会にベテラン選挙戦略家が参戦したためでしょう。ポール・マナフォート氏(フォード、レーガン、ブッシュ父、ブッシュといった歴代大統領、及びドール、マケインといった大統領候補の選挙参謀)、リック・ワイリー氏(ウィスコンシン州知事スコット・ウォーカー、ブッシュ再選、ジュリアーニ元州知事の08年出馬の際の選挙参謀)が加わり、トランプ候補がいよいよ勝利への地固めに入っています。両氏はすぐさま行動に移し、21日には共和党全国委員会(RNC)幹部との密室会合を開催。党大会で正式候補として必要な代議員数1237人の節目を超える可能性を強調しただけでなく、共和党を金銭的側面から支える意向を表明しました。

ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに刻む名は、ワシントンでも通用するのか。
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(出所:mark.watmough/Flickr)

選挙参謀のミッションは、共和党幹部への根回しだけではありません。「中絶を経験した女性に罰を」といった発言を中心に暴言が続くトランプ候補には、厳しい世論調査結果が出ている以上、早々にイメージを刷新する必要に迫られています。例えば、ワシントン・ポスト(WP)紙の記事をご覧下さい。

・トランプ候補 好ましい→31%、好ましくない→67%

「好ましくない」の内訳をみると、本選で勝利できない可能性をはらみます。

・女性→75%
・若い世代→74%
・黒人→91%
・ラテン系→81%
・白人大卒→73%
・白人女性→66%
・穏健派→72%

ちなみに、他2候補の結果はこちら。「好ましい」という回答は総じて30%台ですが、「好ましくない」に重点を絞るといかにトランプ候補の好感度が低いかが如実に物語ります。

・クルーズ候補 好ましい→38% 好ましくない→53%
・ケーシック候補 好ましい→39% 好ましくない→39%

特に、女性の支持率が低い点は懸念材料。2014年の中間選挙では、女性の投票率は43.0%で男性の40.3%を超えていました。2012年の米大統領選でも女性の投票率は65.7%と、男性の投票率61.5%を上回ります。男女でみた投票率の内訳でも、2012年の場合で女性は53%と過半数に達していました。

26日に予定する北東部5州の予備選では、引き続きトランプ候補が有利です。ただトランプ候補が仮に正式な大統領候補の座を射止めても、民主党の正式候補がヒラリー・クリントン氏になれば苦戦を強いられるでしょう。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年4月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。