読売「人生案内」回答者の相変わらずな思い込み --- 田中 紀子

2016年04月24日 12:00

またしても4月23日付読売新聞の「人生案内」に、ギャンブル依存症がとりあげられたのですが、その回答に憤り、落胆し、そして危惧を抱いております。

読売新聞さんで「人生案内」を担当されている皆さんへ。

依存症は病気です。精神論で解決策を語らないで下さい。

以前にも読売新聞さんの「人生案内」に、息子のギャンブルが止まらないという相談が寄せられたことがあり、その時の回答者の、お答えは、
「もっと真剣に親の自覚を持ちなさい」
「家族で腹を割って話し合いなさい」
というひどいものでした。

その時は怒りに震え、ブログを書き、アゴラにも取り上げて頂いたことがございます。
人生相談のいい加減さに怒り

今回の回答者の方は、おそらくギャンブル依存症のことを、過去に聞きかじったことがおありかと思います。
ただその知識が断片的なもののために、解決策とは真逆のことをおっしゃっているのです。

今回の「ギャンブルを繰り返すご主人が生活費を入れなくなった
というご相談に対し回答者のお答えは、
あなたもご両親も仕事を辞める覚悟が必要です
というものでした。
夫は甘えていて、真に反省していない・・・とも書かれていました。

あまりにもひどい、非現実的なこの回答。読売新聞もなぜこの回答を掲載許可されたのでしょうか?

ギャンブル依存症という「精神疾患」が進行して、もう生活費を入れることすらできなくなっているのです。
それなのになぜ、その人を回復させるために、家族が仕事を辞め、病人に経済的に依存し、自分の人生を泥船に乗って危険にさらすようなことを、しなくてはならないのでしょうか?

これがもし「ご主人が心筋梗塞を繰り返している」というものだったら、「ご主人は、甘え、反省をしていない。あなた方家族は、仕事を辞める覚悟が必要です」という回答をされるでしょうか?

ギャンブル依存症はWHOでも認められた精神疾患で、脳の機能不全がおきているのです。
「ギャンブルをやめなくてはならない」ことも、「ギャンブルが勝てない」ことも重々承知しているのです。
けれども、強迫観念のため衝動が抑えられないのです。

もちろん婚費分担請求などの法的手段をとることで、ご主人から生活費を入れさせる方法も模索しなくてはなりません。経済的な「底つき」体験を「底上げ」してあげることで、治療に繋がろうというきっかけになるからです。確かにいくらでもお金が使える状況は、病気を進行させてしまうので、ダダもれ状態は締める必要があります。

けれどもご家族は、いつ破綻するかも分からない泥船に乗り込み、一蓮托生になってはいけません。
回復はするかもしれないし、しないかもしれない。そして場合によっては、回復に繋がったとしても、治療費がかさむこともあるのですから。家族が経済的に自立しておくことは、私たちが最もお勧めしている対策です。

この回答者の先生がおっしゃるように、全員で仕事をやめたりしたら、家族も路頭に迷うことになってしまいます。そうなった時に、この先生はどうしろとお考えなのでしょうか?

そして最後はお決まりの
「家族が腹を割って話し合い解決を誓うこと。それが第一歩だと思います。」
とあります。

依存症に何の知識もない、だからこそこうして相談を寄せてきたご家族が、腹を割って話し合って、解決を誓った所で、何の解決策が見いだせるのでしょうか?

そうではなくまず相談機関に家族が電話を入れるべきです。

なによりも大切なご主人が、不可解な病気にかかり、悩み苦しんでいるご家族に、なぜ回答者は皆こうして説教をするのでしょうか?あなたがもしご家族のギャンブルの借金で何年も苦しみ、何度も話し合い、言い聞かせ、懇願しても、問題が解決せず、人生に絶望していたとして、その上説教されたらどう思いますか?

「もう死ぬしかない」と思う人がいてもおかしくありません。うつ病を発症する人もいるでしょう。
実際そういう方々がいるのです。

どうかお願いです。
もし人生相談にギャンブルの問題で苦しんでいるご家族から相談を寄せられたら、
こんな風に回答して欲しいのです。


「長い間、大変でしたね。あなたは一生懸命ご主人を支えてこられたのですね。もう、何度も話し合いも繰り返されたことでしょう。約束は度々破られ、嘘もつかれ、傷ついていますよね。ご主人は『ギャンブル依存症』という病気かもしれません。

この病気の最も厄介な特徴は、本人が病気を認めず、「自分でコントロールしてみせる」と闘い続けようとすることで、別名「否認の病」と呼ばれています。率直に申し上げて、回復はとても難しい病気です。

けれどもご家族が正しい対処法をとることで、回復に繋がる可能性は、格段に高まります。

まずはご家族が、同じギャンブル依存症の問題を抱える家族会や、自助グループに繋がりましょう。精神保健センター等で情報を得られます。ご家族にも支えが必要です。経験者から対処法を学び、サポートして貰いましょう。同じ経験をした人達が、あなたにきっと希望を与えてくれるはずです。

時間はかかるかもしれませんが、あきらめず取り組んでみて下さい。」


依存症は、致死率も高い「病気」なのです。
どうか、回答者の皆さんもその事実を受け止め、軽々しい精神論で語ることをやめて頂きたいのです。

私たちの心からのお願いです。

田中 紀子 一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
http://www.gamblingaddiction.jp/

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