一億総活躍社会⁉︎「発達障害労働者」争奪戦 --- Nick Sakai

2016年04月26日 06:01

アベノミクスの本質について議論が活発になっております。私の考えを申し上げますと、アベノミクスの本質は、小泉郵政改革の流れを受け継ぐ「小さな政府」の保守主義と、保育士の賃金の月額で約1万2000円引き上げ、非正規雇用賃金の正規の7〜8割程度まで引き上げを表明するような、「大きな政府」の社会主義を取り混ぜた混合主義です。

今、オリンピック特需や東日本大震災特需(熊本地震復興特需も加わりました)で、建設現場の労働者が大変不足しています。中国など外国人観光客の増加により、飲食・観光・小売りなどサービス産業の現場労働力も不足しています。さらに、少子高齢化は確実に進みつつあり、労働人口が減少し、介護などサービスを受ける老年層は増加する一方です。従って、構造的に現業労働力が絶対的に足りていません。特に東京・大阪・東北地方で顕著です。

一方で、長期的に見れば、自動運転やロボット・ドローンなど、ICT化やAI化が進み、今後多くの現業業務が機械に置き換わっていますので、労働生産性は着実に上昇していきます。だから、長期的には現業労働のポジションも減るし、就業者も減るので 概ね均衡すると思われます。(同じメデイアで、現業労働者が足りないといった側から、仕事が機械に奪われるという言説を聞きますが、自己矛盾ですね)

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出典:日本生産性本部

でも、将来はともかく、今は、現業労働者が圧倒的に不足しています。特に誰もがやりたがらない仕事で顕著です。皆さん、ご自身の職場のトイレ清掃を誰が担っているかご存知ですか?もし、皆さんが大企業のオフィスや工場にお勤めなら、かなりの確率で、自閉症の方やアスペルガー症候群の方(いわゆる発達障害者=詳細は図=)が従事されています。

その仕組みはこうです。全ての企業には、法定雇用率(民間で2%)以上の割合で障碍者を雇用する義務があります。そして、法定雇用率を下回ると、ペナルティーとして国に納付金を支払わなければならず、逆に上回ると国から給付金が貰えます。このよ うに企業には障碍者を雇用するインセンティブがあるのですが、せっかく雇ったのだから活用しなければなりません。

でも、特に発達障害者はコミュニケーションが苦手なので、一般的なホワイトカラーの仕事よりも、清掃や社内メール便といった対人関係をあまり必要としない職務に就く傾向があります。潜在能力の高い障碍者も多く、「何でトイレ掃除」と複雑な思いを持つ方もいるのですが、何せ、大企業子会社の正社員の待遇を受けるので不満はないでしょう。

お給料は最低賃金並みであっても、大手優良企業子会社の正社員という肩書きはなかなかのものです。手厚い生活指導もある。一方、企業にしてみれば、このご時世、トイレ掃除などを外注すると却って高くつ きますので、正社員の待遇と引き換えに安価な現業労働力を安定的に確保できるのはウィン・ウィンなのです。

ところが今、ある異変が起きてるそうです。これはある大手企業の関係者から聞いたのですが、(その会社は障碍者専門の特例子会社を持っています)今現場で「有能な発達障害者」の奪い合いが起きているそうです。そもそもトイレ掃除を外注すると高くなるので、できるだけ「有能な障碍者」を確保したい。で、他所の会社から、「有能な障碍者」を高待遇で引き抜くというのです。といっても待遇はもともと月給15万円程度なので、上乗せ分はたかが知れていますが。

この「業界」は狭いのです。年に何回も会社対抗発達障碍者野球大会とかを開いて、企業の 枠を超えて親睦を深めているので、「スター選手」は目に留まりやすいのです。それで、プロ野球の球団移籍みたいなことが起きているというのです。格好いいじゃないですか。いや、あっぱれです。発達障碍をお持ちのお子様の親御様、将来は明るいですよ。かならず障碍者手帳をゲットしてください。

さて、その話を聞いた、私の感想は「アベノミクスのトリクルダウンがここまで降りてきたのか」であります。

若者の現業労働力はまずはおしゃれなスタバなどの飲食に廻る。一方で、きつい・汚い・危険の3K仕事はなり手がいないので、給料を引き上げる。でもなかなか人が集まらない。で、障碍者の引き抜きが始まる。こんなことは、今まで聞いた ことがありません。

今回は障碍者の労働事情という極めてニッチな話をしましたが、それは非正規労働者全体にも言えることです。正規と非正規雇用の賃金格差を現状の57%からドイツ(79%)並の7~8割程度に引き上げる。そんなこと、労働需給が逼迫して、景気が良くなければ出来っこありません。

こうした非正規雇用の待遇が改善されれば、正規雇用にしがみついて理不尽な会社忠心主義に囚われる必要が薄れますので、それは労働者全体にとっても朗報ですし、女性や高齢者といった正規社員になりにくい人々の労働参加が進むでしょう。

戦後レジームのひとつであった、年功序列・終身雇用の呪縛からようやく脱出できる道筋が見えてきたよ うな気がします。

発達障害とはー政府公報より

発達障害は、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害です。発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手です。また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。それが、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものだと理解すれば、周囲の人の接し方も変わってくるのではないでしょうか。

発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など、主な発達障害の特徴があります。

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Nick Sakai  ブログ ツイッター

ビジネスアナリスト
金融機関で在外勤務する傍ら、電気自動車、IoT(モノのインターネット) 等のイノベーションの実業化の動向を分析。ICT、エネルギー、経済・経営分野にも精通している。執筆やNPO活動を通し、イノベーション普及に向けた啓発にも取り組んでいる。
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