4月28日の日銀金融政策決定会合において、市場での予想というか期待の強かった追加緩和は決定されず、現状維持となったことで円高が急速に進み、29日ニューヨーク外為市場ではドル円は106円台前半まで下落した。ユーロ円も122円を割り込んだ。
この急激な円高を受けて、5月2日の東京株式市場で日経平均は16000円を割り込んだ。日経平均の16000円割れは4月12日以来となる。この4月12日あたりから日経平均は反発基調となっており、日銀の追加緩和観測も手伝って4月下旬に17000円台を回復した。しかし、その反発も25日あたりがピークとなって28日に日経平均は急落することとなる。
ドル円も同じような動きをしており、4月7日あたりがいったん底になり、107円台から111円台後半に上昇した。しかし、追加緩和観測の出た22日あたりがピークとなって28日からドル円は急落した。
22日のブルームバーグの記事に市場がやや過剰反応を示したのは、原油価格の上昇などもあり、ドル円がいったん下げ止まり、同様に日経平均も下げ止まったところにショートカバーのような動きが入ったためとみられる。
ドル円の動きをみると昨年6月に125円台を付けたあたりでピークをつけ、12月あたりからダウントレンドが顕著となっていった。今年に入ってドル円は一時的な反発は何度かあったものの、今回を含めてそれは一時的なものとなり、ダウントレンドは継続中といえる。
米財務省は29日に貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書において、対米貿易黒字が大きい日本や中国、ドイツなど5か国・地域を監視リストに指定したのである。米当局は相手国が不当な通貨切り下げなどを強めれば、対抗措置がとれるとしている。年明け以降の円高・ドル安については、市場は秩序的だと評価し、日本の円売り介入を改めてけん制した。
これに対して30日に麻生財務相は、「一方的で偏った投機的な動きに極めて憂慮している」と述べた。「(投機的な動きに)必要に応じて対応する」とも明言し、円売り介入も辞さない姿勢を強調した」(日経新聞)。
しかし、この発言に対しての反応は鈍かった。市場では日本政府による介入は相手国となる米国の姿勢も配慮せざるを得ないためハードルは高いとの認識があろう。さらにこのドル安の流れは容易には止められないとの認識も働いているのではなかろうか。
結果として円高となり、28日から29日にかけての米国株式市場は続落した。これを見る限り、リスク回避のような動きに見えなくもない。しかし、原油価格はしっかりしており、肝心のリスクが見当たらない。米国債も買われてはいたが、今回の動きはこれまでの原油安や中国の経済減速を意識したリスク回避の動きとは様相が異なる。
もう少し長い目でドル円や日経平均の動きをみると、これはいわばアベノミクス相場の反動といった動きにも見えまいか。日銀の金融緩和により円安・株高が演出されてきたが、その日銀やECBの追加緩和に対して市場は見切りをつけてきたようにも思われるのである。
特に日銀は肝心の物価目標達成時期を先送り続けており、金融緩和による効果が疑問視されてもおかしくはない。ただし、日銀が強力に国債を買い入れ、足元のマイナス金利化により債券市場は流動性が後退するなか、10年を超える国債の利回りのマイナス化が継続している。つまり債券については人為的に利回りが押さえつけられている状況にあり、日銀の大胆な金融政策は国債のイールドカーブをこれでもかと引き下げてられているが、結果が出ているのはある意味、そこだけともいえる。
期待による円安・株高効果も後退しつつあり、アベノミクスにより残ったのは、日銀の金庫に積まれた膨大な国債と(実際は国債はペーパレスなのでイメージ)、これでもかと引き下げられたその国債の利回りとなる。つまり国債の価格は異常なほど高騰している。ドル円や株は素直に調整しているようにも見えるが、果たしてこのまま国債もおとなしくしているのであろうか。
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