訪米中の石破茂氏は、共和党の大統領候補になるとみられるドナルド・トランプが「日本が駐留米軍の経費を全額負担しなければ米軍を撤退させる」と述べていることについて懸念を示した。将来は憲法を改正して日米安保条約を双務的な条約に改正する必要があると述べる一方、トランプが「日韓は核武装すればいい」といっていることについては否定的な考えを示した。
これは正論だが、日本が核武装することは現実に可能なのだろうか。法的には現在の憲法でも核兵器を保有できるというのが政府見解だが、これは核拡散防止条約違反なので、石破氏もいうように日米同盟の全面的な見直しになる。
『コストを試算! 日米同盟解体』によれば、トランプのいうように米軍が全面的に撤退すると、それを自衛隊が代替する直接経費だけで年間4兆2000億円かかるという。直接経費だけで現在の在日米軍関係費4300億円の約10倍であり、しかもアメリカの核の傘を失う。
独自に核武装するコストは、イギリスの例では年間3000億円程度だが、自衛隊の抑止力は米軍よりはるかに劣る。核弾頭をつくることは技術的にはむずかしくないが、それを搭載した兵器を開発するには3~5年かかる。しかも日本が核武装すると決めた瞬間に、東アジアの軍事バランスは大きく変化する。
核兵器は、双方が保有している場合は防衛的な兵器だが、一方だけがもっている場合が危険だ。朝鮮戦争でもベトナム戦争でも、核兵器の使用が検討された。日本が核兵器を保有する準備をしている間に、中国が何かの口実をつくって攻撃してくることはありうる。
ただし「核のオプション」をもっておく必要はある。本当に日米同盟が解消された場合に、丸裸になるからだ。日米同盟は65年も続いているが、歴史上100年以上続いた同盟関係はないので、今後も長く続くとは限らない。