IoT教育って?

2016年05月12日 11:30

総務省情報通信審議会のWGに呼ばれ、「IoT教育」というネタでのプレゼンを求められました。以下、概要。

先日、「2045年の教室」というテーマで子どもワークショップを開きました。子どもたちにとって一人1台タブレットは当たり前、1人1台ロボットになる。AIで勉強を教えてくれるが、もう知識は脳にダウンロードするから不要だと。知識よりコミュニケーションが大切になる。IoT、AI、ロボットは当然。というのが彼らの未来です。

教育の情報化は、PC+CDで教材を使っていたデジタル教育から、タブレット+クラウドでデジタル教科書のスマート教育へと移行し、さらに、ウェアラブル端末、ビッグデータ、SNSへと広がりをみせます。

それが今度はロボット、IoT、AIの、いわば「IoT教育」へとコマを進めようというのですが、日本はまだスマート教育にも至っていません。日本の教育情報化がOECDの中でも最低レベルであることは周知のとおりです。

このところビッグデータの教育利用が盛んになってきました。学習履歴データを分析して、教材を開発したり、一人ひとりの指導を充実させたり、あるいは学校のマネジメントに活かしたりしています。

リクルート「学校サプリ」は、30万人のデータを活用して最適学習を提案。学研は学習塾10万人の履歴を分析しています。eboardというNPOは学習ログを活用する生徒・指導者向けサイトを提供。コードタクトのSchool Tactというアプリは、児童生徒の相互関係を可視化するアプリを提供。京セラは、大学に向けて、ビッグデータ分析による教育改善に加え、大学の広報や経営戦略に活かす総合サービスを提供。

ポイントは、これらは学校主導ではなく民間企業主導であることです。教育情報化の専門家や重鎮には、教育ビッグデータ利用は不要という人が結構いて困りもんだったんですが、企業主導でかまいません。

IoTは、その概念がまだ定まらないうえ、教育とかけ合わせると余計にイメージがハッキリしません。今のところ、デジタル技術でロボットやガジェットを作って身の回りの問題を解決するとか、学校に埋め込まれたセンサーの情報を使って学ぶとか、そういう感じです。

ソニーのMESHは、ブロック状の電子タグとiPadのアプリで、タグの中にあるLEDライトやセンサーを作動させて、工作したり、身の回りを楽しくしたりするIoTツール。ロボット(MEEBO)が画像認識センサーで子どもの顔を認識して、保護者と共有する事例。リアルグローブ社はロボットで教室空間のデータを収集し活用する構想を進めています。米AltSchoolは、カメラやヒートセンサーで教室空間の映像などのデータを収集して空間設計しています。

これらに共通するのは、プログラミング教育の重要性。全てのモノがデジタルになっていくので、その原理は、よみかきプログラミングと言うべき基礎的な素養となります。いわゆるSTEM教育、理科学教育が注目されていて、それをIT専門家やIT産業人材を育てる文脈で語られることがありますが、そうではなく、全ての人が身につける基礎教養と捉えるべきです。

子ども向けプログラミングで世界的に最も利用されているのがScratchという言語。MITメディアラボが10年前に作ったもので、日本でもこれを使った教室や塾がブームのようになっています。これを古くから日本で展開しているのがCANVAS。14年前に総務省の支援も受けて立ち上げたNPOです。

PEGというプロジェクト名で、ラズベリーパイという簡易PCと組み合わせて学校などで年間2.5万人の子どもにワークショップを展開しています。ただ、この活動を支援しているのはGoogleやSalceforce.com、マイクロソフトといったアメリカ企業であることに留意すべきです。

日本がやるべきことは2つ。
1)スマート教育のインフラ整備と、2)IoT教育の先端開拓。
前者はキャッチアップであり、後者は世界をリードする取組です。

1)スマートのインフラ整備のミッションは3つあります。a)タブレットの1人1台化と、b)クラウドの普及と、c)デジタル教科書の正規化。a)1人1台は自治体がお金をつける仕事。b)クラウドの普及は、セキュリティのために学校をつながせないでいる条例などのルールを改めること。これは政府がガイドラインを作って促す。c)デジタル教科書の正規化は学校教育法など数本の法律を改正するもので、国会の仕事。DiTTでも法案の文案を策定しています。

さらに民間でも動かせる施策があります。例えばa)中古PCの流通市場を作ること。b)教材クラウド配信機構を作ること。c)デジタル教材は著作権がネックになるので、映像や音楽で進められているような著作権集中処理機構を作ること。こうしたことは総務省PMOでも議論していることであり、実現に向いたい。

最大のネックはお金です。
この際、電波利用料を使えばどうでしょうか。いずれも電波の有効利用に資するものです。地デジ整備終了で浮く部分を、デジタル教育という、次世代の電波利用者に還元していくのは悪くない。と思ってパブコメも出しました。

もう一つ、2)IoT教育の先端開発。世界一のIoT環境、これは今なら作れます。「未来の教室」テストベッドを作るのはどうでしょうか。IoT、AI、ウェアラブル、ドローン、ロボットを集中して開発・実証できる産官学連携のオープンラボ+ショウケース。

私は港区・竹芝にデジタル集積特区を作るプロジェクトを進めています。研究機関やビジネス活動を集めて2020年に街開き。既に総理から国家戦略特区の認定を受けていて、具体的な特区構想を練っています。電波特区や技適特区。技適マークのついていない開発中の機材が使えるとか。

著作権者不明の孤児著作物を蓄積して利用できる映像アーカイブ特区、デジタル教材特区。ロボット特区やドローン特区もやりたい。NICTのような国の研究機関が来てくれて実現してくれればなぁと夢想する次第です。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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