三菱自動車は「日産の下請け会社」が正しい解釈

2016年05月13日 12:40

資本提携という美名の実態

燃費データの偽装が発覚して窮地に陥った三菱自動車は、日産自動車からの出資で危機を切り抜けることなりました。メディアは「日産の傘下で再建」、「自動車メーカーの大型再編」とかいっております。ニュースとしての付加価値を上げるために、すぐ「大型再編」など呼ぶ悪いクセからの卒業が必要です。

資本提携の実態は日産の下請け会社化でしょう。日産は喜んでいるはずです。シャープを買収した台湾企業の鴻海にも似ています。生産工場も販売店も実質的に日産に吸収、統合されるでしょう。三菱自の上場は維持するとしています。しばらくはそうかもしれません。そのうちに、2社も上場していることの不経済性に気づき、単なる「三菱水島製作所」に格下げになるかもしれません。

三菱自動車がこんなにも、ひどい企業だとは想像していませんでした。企業危機に対する対応が信じられないほど、後手というか、無策というか、うろたえぶりは今もひどいですね。偽装の全容をいまだに明らかにしていません。偽装どころか、机上で架空のデータをねつ造していたというでありませんか。三菱自が意図的に隠していたのか、はじめから全体としてのまとまりのない企業だったという解釈もできますね。

三菱グループはお荷物の整理でほっとする

企業経営、統率の基本がもともとなってなかったということでしょうか。三菱グループという「三菱」の名が泣きます。というよりか、お荷物の企業を切り離せてグループはほっとしているに違いありません。三菱重工、三菱商事は大株主として、親企業としての経営責任、指導を全く果たしていなかったということもできます。

シャープせよ、オリンパスにせよ、東芝、今回の三菱自にせよ、かつての優良企業で相次いでいる危機は、日本企業の経営の緩み、企業倫理の低下を示しているのです。デフレに象徴される日本経済の低迷が深刻化するのは当然です。

日産が勝利者ですね。救世主のようにありがたがれながら、年産100万台の自動車会社を2300億円で買えたのですから。生産停止や販売減による損失、系列会社への救済資金、消費者が払いすぎたガソリン代の還付、当局をだましたことに対する課徴金、予想される株主代表訴訟などで、少なくとも数千億円の損害賠償の支払いが待っているにせよ、4500億円の現預金があるし、いざとなれば株主の三菱東京UFJ銀行の支援を引き出せます。

美辞麗句の裏側にある身売り

日産のゴーン社長は「両社の潜在力を引き出し、相乗効果を引き出す」と、発言しています。美辞麗句を発言しなければならない場面ですから、本音ではないでしょう。救われる側の三菱自の益子会長(三菱商事出身)も「信頼できるパートナーがいた」と発言しています。本音は「実質的な身売り」に軟着陸させたい、でしょう。

倒産状態の日産自動車を大胆な合理主義で再建したゴーンさんのことです。これから徹底した組織再編、人員整理などのスリム化に踏み出すでしょう。早くも「複数の取締役を派遣」(日経)というのは、経営の全体を日産が掌握するという意味だ思います。「WIN WINの関係に」(ゴーン氏)も美辞麗句で、どう三菱自の下請け化を冷徹に進めるかが焦点です。

三菱自には経営能力、管理能力がなくても、ゴーン流の役員、管理者がくれば、生産ラインの価値は生かせるはずです。日産にノウハウの少ない軽自動車の研究開発をどうするか。電池自動車、自動運転化などを含め、もう一段の資本提携、企業連携がありうるとは思います。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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