小保方晴子氏は、甦ったのか

2016年05月27日 06:00

科学史に残る捏造事件は数々あるが、人々の記憶に残る捏造事件といえばダントツで小保方晴子氏のSTAP騒動であろう。2014年1月に彗星のように現れて「リケジョの星」「ノーベル賞候補」と崇められるも、2月には論文にコピー&ペースト疑惑が発覚、3月には早稲田大学の博士論文にもコピぺ騒動が飛び火した。

4月の釈明記者会見は、この騒動の最大の見せ場だろう。小保方氏が甘ったるい声で「STAP細胞はありまぁす」と宣言し、目頭に白ハンカチを当ててシクシク泣いたシーンは、数多のテレビ番組で繰り返し放映され、多くの男性が魅了された。論文上の写真や文章の無断流用について、既に数多くの証拠が指摘されていたにも関わらず、「一生懸命やっている」「若き才能への嫉妬」「製薬利権の罠」と擁護するオヤジがあちこちに出現した。小保方氏への追い風が吹き、流れが変わった。

しかし、風は長くは続かなかった。その後も、「採用試験における特別扱い」だの「らくがきのような実験ノート」だのヤバい事実が次々と発覚し、7月には論文を正式撤回し、8月には共同研究者が自殺を遂げる。そして12月、理化学研究所は「STAP細胞は作成できなかった」ことを公式発表し、本人は依願退職となった。2015年には早稲田大学での博士号が取り消され、これで騒動は収束したか…と思いきや、2016年1月に小保方氏は手記「あの日」を出版し…騒動は次のステージに進んだ。

小保方氏の手記「あの日」を私も読んだ。表紙は白無地にタイトルのみ、本文中にも写真はない。ダラダラ長く要領を得ない文章が続き、読みにくい。258ページの力作で、26万部超というベストセラーなのに、本の評判は良くない。Amazonレビューでもトップ7位までは「★☆☆☆☆~★★☆☆☆」の否定的コメントばかりである。結局のところ、小保方氏が人気を集めたのは、あの容姿と甘ったるい声である。論理的に活字で他人を説得する能力(科学者には必須の能力だが)は高くない。この本では風は吹かなかった。

2016年5月、小保方氏は「婦人公論6/14号」誌上で、瀬戸内寂聴氏との対談に応じた。7ページの短い記事で文章量は少なく、「あの日」と同様のマスコミ批判や自己弁明が目立つ。「あの日」との最大の相違は、プロにヘアメイクを整えてもらった小保方氏の写真が、フルカラーで何枚も掲載されたことである。白く清楚なミニワンピ―ス(ヴァレンティノの十数万の物?)から美脚をあらわにした姿は、30代とは思えない。目頭を白ティッシュで押さえて涙をぬぐう写真もあり、2014年4月の釈明記者会見を想起させる。その効果なのか、発売直後のワイドショーはこの話題を一斉に取り上げた。Amazonレビューもトップ4件は「★★★★★」という好評ぶりである。ちなみに、同じ雑誌には女優の樹木希林や光浦靖子も登場しているが、本文は白黒ページ、写真は白黒が1~2枚掲載されたのみであり、小保方氏はプロ女優すら完全に喰っている。

どうやら「婦人公論」の編集者は「あの日」の編集者よりも、小保方氏の「売り方」をわかっているらしい。

写真は婦人公論社ホームページより

筒井冨美

フリーランス麻酔科医、医学博士

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。2013年から、東洋経済オンライン「ノマドドクターは見た!」で論壇デビューし、執筆活動も行う。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」では、「STAP騒動」を「オバサン系リケジョ」として分析している。

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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