女子高生の行動が教えてくれる2つの重要なこと

松田 公太

「突然、女子高生に届いた玄米60キロ…困惑した彼女が気づかされた身近な貧困問題」というニュースを目にしました(西日本新聞6月4日)。

昨年7月、高校生が合宿をして意見を交わす「日本の次世代リーダー養成塾」に参加した一人の女生徒。彼女が入塾式で行った決意表明は、「子どもの貧困や教育に関わる仕事が夢なので、たくさんの考え方や価値観に触れて世界を広げたい」というものでした。

その様子が地元紙に取り上げられ、それを見た両親の知人から「新聞を読んだよ。お米を送るから使ってね」と届いたのが、玄米60キロだったそうです。

子どもの貧困問題に関わりたいと考えていた彼女でしたが、それは将来の話であり、しかも海外の発展途上国への援助をイメージしていたため、突然の贈り物に困惑。

しかし、せっかくの善意を無駄にはできないと思い、自分にできることはないかと新聞やインターネットで調べるうちに、全国で広がっている子ども食堂の動きを知り、遠い海外ではなく身近な場所にも困難な状況にある子どもたちがいることに気づきます。

そこで、彼女は近くの子ども食堂に連絡をとり、玄米の寄付を申し出ました。ところが、「ちょうど大量のお米が寄附されたばかりで、受け入れる余裕がない」と断られてしまいます。

どうすればよいか悩んだ彼女を助けたのは、「だったら、現金を寄附すればいいんじゃないか」という友人たちのアドバイスでした。そのアイデアをもとに検討を重ね、イベントに出店して、精米して小分けにした玄米を、絵が得意な仲間がデザインした手作りのラベルを貼って販売したところ、わずか2時間で完売。その売上げを寄附したとのことです。

私は、このエピソードは2つの重要なことを教えてくれていると思います。

1つは、目的を見失わないことの大切さ。
届いた玄米60キロを処理するという目先の目標にとらわれず、子供の貧困や教育にかかわりたいという夢を忘れなかったからこそ、玄米そのものの寄附を断られたときに、目標を変更し機転のきいた行動をとることができました。

彼女たちは、イベントで、「子ども食堂に寄付するために販売しています」との看板を置いて活動していたため、子ども食堂のことを多くの人に知ってもらうことにもつながりました(米を買わずに現金の寄付してくれた人もいたそうです)。結果的に、直接玄米を寄附するよりも彼女の目的の達成に近づけたと思います。

2つ目は、身の回りに潜んでいる深刻な問題について。
実は、日本の子どもの貧困率が高いことはあまり知られていませんが、その率は上昇傾向で、特に大人1人で子供を養育している家庭で高くなっています。

具体的な数字で見ると、所得が中央値の半分に満たない人の割合を示す「相対的貧困率」を基準にすれば、日本の子どもは6人に1人が貧困層です(ユニセフ公表)。また、ひとり親家庭の貧困率は54.6%と経済協力開発機構(OECD)の34か国の中でワースト1位になっています。

まだまだ日本は裕福な国だ、貧困とは無縁だと考えている人も多くいますが、実際はこのような状況なのです。

この問題をどうすればよいか。そのヒントは、今回の女子高生の行動にあります。彼女のような気持ちを持った人が増え、日本の貧困率を下げようと実際にアクションを起こせば、必ず状況を改善することができるはずです。

フェロー勉強会などで国民の皆さんと話をしていると、社会問題などに対して関心をもち、自分でも何かやってみたいという方は多くいますので、このニュースがそういった人たちの後押しになって欲しいと思います。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会)のオフィシャルブログ 2016年6月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。

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