サウジ:「国家改造プログラム2020」を読んでみた

2016年06月09日 06:00

今日になっても欧米マスメディアに「評価」が載らない”National Transformation Program 2020” を読んでみた。正確にいうと、110頁からなる報告書を最初から読み始め、前文(Forward)、第1章 国家改造プログラム(National Transformation Program)の各項目を読んで、続いて第2章の各組織(モハマッド副皇太子の管轄外である内務省や外務省を除く、経済開発評議会関連の16省および8つの他の政府各部門、合計24組織)の個別の行動プログラムを読み始め、疲れてあとは拾い読みしたのが実態だ。

面白くないからだ。

結論は、昨日の弊ブログ「198.サウジ『ビジョン2030』の具体的行動計画??」で書いたように、「締め切りに間に合わせて提出しました」という感が強い。これで「ビジョン2030」にどうつながるのだろうか?

第1章の各項目は次のようになっている。

・原則と国家改造プログラムの確認
・国家改造プログラムの目的
・国家改造プログラムの運用モデル
・国家改造プログラム参加組織
・国家改造プログラムの統治モデル
・国家改造プログラムの費用と収入

第2章の、各組織の個別プログラムは、それぞれ現状認識(Baseline)、2020年目標(Target 2020)、地域基準(Regional Benchmark)、国際基準(International Benchmark)となっている。

たとえば、「公務員の給与が国家予算に占める比率」については、財務省の行動プログラムに記載されており、「現状45%、2020年目標40%、地域基準30%、国際基準12%」と記されている。つまり、国際的には12%だが、中東近辺では30%、ところがサウジの現状は45%と高いので、2020年までに40%に引き下げよう、ということだ。

ところが、同じ財務省の行動プログラムにある「非石油収入」については「現状1635億リヤル(436億ドル)、2020年目標5300億リヤル(1413億ドル)」となっているが、「地域基準109億リヤル、国際基準6910億リヤル」となっていて、何を比べているのかが分からない。

また、民間における新規雇用については、「第1章 国家改造プログラムの目的」の中に「47万人以上」という数字があり、一方で「サウジ旅行・国家遺産委員会」の行動プログラムの中に、同部門に置ける直接雇用人員が「現状83万人、2020年目標120万人」とあり、37万人の増加を見込んでいるのがわかる。だが、それ以外は見つからなかった。

だが最大の問題は、上記の3プログラムすべてについて、どうやって2020年目標を達成するのか、という方法論が書かれていないことだ。「弊ブログ198」で書いたように、これらのプログラムを遂行する役人の能力が「ある」ことを前提にしているのだが、果たして本当に「ある」のだろうか。放り投げっぱなしでいいのだろうか。

さきほど池内先生がTwitterで紹介してくれた “The burden of the expatriate worker” (Saudi Gazette, June 8m 2016)という記事を読めば、いかに現在のサウジが、日常生活のすべての面において外国人労働者の手をわずらわせているかが分かる。外国人労働者がいなければ、サウジ社会はストップしてしまうほどだ。サウジ人労働者はどこにいるのだろうか、と不安になる。サウジ人の3分の2が政府関連の仕事をしているそうだから、その昔の中国における「鉄の弁当箱」を持った公務員と変わらないのでは、と想像している。

「国家改造プログラム2020」は、各組織に優秀な人員が揃っていることを前提にしているようだ。彼らの能力アップが必要なこと、そのための具体的な方策については全く触れていないのだ。

なお付言すると、エネルギー省の「1250万B/Dの生産能力維持」という目標は、最高の国家機密ゆえこれまで発表している以上の情報を与えない、という意思の表れであろう。

また、時間がかかる次の2項目については、現時点で既存プロジェクトが進行中で、目標達成はほぼ問題ないものと思われる。

すなわち、ドライガスの生産を120億立方フィート/日から178億立方フィート/日への増産原油換算228万B/Dから338万B/Dへ)というのは、発電用に回している原油を少しでも多く輸出に回すためであろう。なお、ドライガスとは、原油生産に付随して生産されるウェットガスと異なり、ガスだけで存在しているガス田から生産されるものである。

さらに、製油所能力を290万B/Dから330万B/Dに増やすのは、増加する国内石油製品需要に見合ったものと思われる。
欧米の識者がどのような評価をするのか、興味津々だ。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年6月8日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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