世界の不確実性と日本の奇妙な安定感

英国のEU離脱を問う選挙が進んでいますが、仮に残留となってもそれで安心できるわけではありません。今回の問題の根本はユーロ体制に対する不満がたまたま英国で大きなボイスとなっただけで2017年のドイツ、オランダ、フランスでの選挙で再び国を二分するような議論となってもおかしくないでしょう。

アメリカも11月に大統領選が行われます。このところ、トランプ氏支持派の凋落が伝えられていますが、まだ選挙戦は長いので全米を巻き込んだ議論が継続されることでしょう。お隣中国は議論を吹っ掛けると捕まるお国ですから国民は心の中で鬱積するものをぐっとこらえて黙っているのだろうと思います。中国でボイスが自由に飛び交うようになれば共産党は吹っ飛ばされるのではないでしょうか?

日本では参議院選挙が始まりましたが議論で盛り上がるということはなさそうです。特に今回の選挙は争点が与野党でずれまくっていますのでつまらない選挙となりそうです。

日本で議論はなぜ盛り上がらないのでしょうか?個人的に思うことは、我慢してしまう、あきらめてしまう、野党に力がなさすぎる、国家体制が盤石すぎる、保守的思想の蔓延などがあげられるのではないでしょうか?その上、近頃は「草食系若者」と「偏食系若者」が増えすぎたようです。

草食系がなぜ増えたのか、これも長年のテーマです。一時、ユニセックス化が指摘されました。男がより女に、女がより男に近づく的な発想です。女性の社会進出は勿論大きな要素です。が、それだけでもなさそうです。

確かに男はファッションに気を配るようになる一方、女子はタバコを吸い、「女酒会」でガンガン酒を飲んだりします。女はスカートより動いやすいパンツファッションと確かにその傾向はみて取れます。しかし、Z世代(85年から91年生まれ)は37.5%が草食系女子とされる報告もあります。

これは日本の「失われた時代」に符合し、バブルが何であるかも知らない世代が小さな幸せに満足するようになってしまったことがあるかもしれません。今の若い人にはスポーツカーも高級スイス時計も全身デザイナーズブランドも必要ではありません。そのかわりフェイスブックでつながるうれしさ、友達とシェアする楽しさ、イヤホンの音楽で自分の世界に入り込む引きこもり感、ミニマリストとしてすっきりあっさり過ごす人生がテイストなのでしょう。これは世界の中では私が見る限り日本、韓国などに見られる傾向ではないでしょうか。

欧米ではなぜ対立軸が生まれ、ボイスを交わし盛り上がるのでしょうか?私が見る限り、欧米人は少なくとも「濃いブラッド」を持っていると思います。中流の人は中流なりの、上流の人は上流の人なりの不満がいつもあって(私は聞き役になってしまいますが)常に「もっと」という熱い欲望が渦巻いています。

その背景の中、リーマンショック後の過剰流動性が招いた格差社会に対して大衆が蜂起した、ということではないでしょうか?主要先進国の金融緩和によりニューノーマルが生じました。これが社会に不満を生み出し、民衆の蜂起化現象を引き起こした、これが私の現在思うところです。

金融緩和が引き起こした問題とは何でしょうか?金利が下がりました。その結果、金利収入が重要な生活手段だったリタイア層はそれを失いました。(欧米は5-10%の金利でした。)金利低下で投資マネーが市場に入り込み、住宅価格は暴騰しました。世界から安い不動産を求め、マネーが集中砲火のごとく浴びせられたため、一般大衆はいくら金利が安くてもローンをして買える物件はうんと遠方に行くか、小さな集合住宅ぐらいとなりました。

企業は効率化を求め、世界の同業を買収する一方でリーマンショックで数多くの構造的変化が生まれました。、安泰であった職が失われたり、かつての水準の給与はもらえなくなりました。アメリカの自動車産業はその好例であります。私の顧客であるホテルの従業員用駐車場を歩くと面白いことにエグゼクティブと称する駐車エリアの車は生活感あふれる年季の入った車が多いのに対してアルバイトの人達の車はアウディやポルシェといった高級車で通勤する人が目立ちます。明らかに歪んでいるのです。

この歪みに声を上げるのが欧米、諦めて自分の世界を作り上げるのが日本を含むアジアのような気がします。

不確実な世界はまだまだ続く気がします。悩ましい世の中です。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月24日付より