「政治への関心」という名の幽霊退治のために

2016年07月13日 20:45

国会議事堂

参議院選挙が終わった。

自民党の圧勝は、憲法や個別政策については意見が異なっても、手法に違和感を感じても、都合の悪い質問に感情的に答えるトップでも、経済政策でそれなりに評価のできるということを示しているのだろう。民主党時代の総括ができないからだろうか、民進党は野党統一候補を立てたものの、厳しい結果となった。

今回の投票率は相変わらずだったが、これに対して「政治への関心」を唱え続けるだけではなんら問題は解決しない。

政治に関心がある人の4つのタイプ

政策?政治家?政党?選挙?多くの人の「政治」像は全てごっちゃになっているのが現実だ。

そして、周りにいる「政治に関心がある人」を見て余計に混乱する。個人的な経験で恐縮だが「政治に関心がある人・興味がある人」と会うと大抵、4つのタイプに分けられるように感じられる。

タイプA
政治ニュース、政界の人事マター、政治家個人について興味がある人。これは戦国時代好きな男性のメンタリティーとも言える。政治ゲームに関心がある人で、芸能情報についての関心となんら変わらない。

タイプB
政治に繋がっていると得になると思っている人。例えば、政治につながっているとビジネスにおいて得になる、自分の利益を拡大したい、自分の考え方・価値観に近い政策を実行してもらいたい、何かあった時に自慢したい、といった人間らしさ溢れる欲望に忠実な方々だ。

タイプC
生活上で何か困っていることがあり、問題解決を政治に求める人。生活上で困っている問題があり、どうしても関連する政策への関心が強くなる。自分が求める政策への予算配分を求める人々である。本来なら政治家が真っ先に関心を持ち、救ってあげるべき人たちである。

タイプD
「社会のため」政治にかかわるという人。いわゆる意識高い系である(私もこのタイプである)。このタイプの問題は、自分の理想としている社会像や大事にしている価値観(公平性とか)に照らして政治の理想を求め、改革を求めるということだ。結果として、政治結果に不満を抱きがちで「周り(大衆扱いしがち)はなんでわからないのだ」という愚痴を言っては一喜一憂しがちである。

タイプDは上記のタイプABを見下しがちであるが、行動としては、自分の得になるからやっているという意味で同じ穴のムジナである。無自覚・無意識的であることが多く、その意味で余計にタチが悪いかもしれない。

以上のタイプが多くを占める「世界」にどうして関心を持ちたいと思うか。

関心を持った人たちに対して憧れるということは少ないだろうし、政治に熱をあげる人に対して(心理的に)ちょっとひいてしまう、というのが普通だろう。こうした中で、「関心を持ってほしい」と主張するのは意味がない。

お世辞にもかっこよいとは言えない世界に対して、感性の鋭い若者はひいてしまうし、多くの人が無党派層になるのは当然のことだ。

関心を持てないようになってしまう圧倒的な情報量と難しさ

関心の対象の問題もある。「関心」の対象が大きすぎることだ。政策といっても、経済政策(金融、産業、製造業、IT、中小企業対策、観光など)、社会福祉(高齢者、しょうがい者、年金、健康保険など)、環境(自然保護、ゴミ、温暖化、大気汚染、生物多様性など)、道路、上下水道、教育、・・・とあらゆる世界にかかわっているので、情報量が多く、そして難しい。

生半可な学習ではさっぱりわからないのだ。高校時代の政治経済の学習でも不十分である。

個人的な経験で恐縮だが、子供の頃から政治の研究をしてきて、大学院まで進み(途中でやめたが)、行政関係の仕事を長年してきて政策評価が専門である自分でもまだわからないことが非常に多い。行政の仕組み、経済から社会福祉までの様々な政策、そのなかで政府の果たせる役割と影響度合いなどなど理解するためには相当の時間を割かないといけない。

人間は理解できないことに対してはなかなか関心を持つことができない。まずは理解を促進するために何をするか。そのための3つの処方箋がある。

理解を促す3つの処方箋

第一に、自分の生活にいかに政治が影響を与えるかを「見える化」する。文科省は非常に素晴らしい有権者教育を行っている。ディベート、地域課題解決、議会への請願など、内容を見ても「すごい」と関心した。

この教材、ちょっと改善するともっと素晴らしくなる。それは、実施された政策が自分の生活や行動にどのような影響を与えるかをこのプログラムに追加する改善を行い、さらに、大人にも広げればと思う。一方、行政側は政策評価を充実させることも必要だ。これは政府の仕事。

第二に、どういった利害関係があるかを「見える化」すること。我々はどの団体が候補者に推薦を出しているのかなかなか知る機会が少ない。選挙事務所に行けばどの団体が推薦しているのかがすぐにわかるのだが。どういった利害関係があるのかを伝える。これはメディアの仕事。

第三に、政治家さんを代理人として使ってあげること。主権者は国民なのだから、ちょっとしたことで代理人を使えばいい。テレビで当選した政治家が「万歳」をする光景を見た。まともな人ならこれからの責任感や重みにずしりときて、笑顔でいられないはずだが、なんでだろう・・・・。実際、退職させられる事も滅多にない、地位も名誉も経済的にも保証されるので安心できるのだろう。実のところ、自分たちの恩人(支持団体)にそれなりに報いていれば大丈夫という非常に楽な仕事だというのが現実だ。なので、支援したかどうかにかかわらず、連絡して使ってあげればいい。これは国民の仕事。

勇気を出して政治家の事務所にコンタクトを取ってみるとよい。まともな議員はまともに対応してくれる。事務所には誠実な人が多いから。少し偏っている意見を教えれるかもしれないが、政治への理解を促してくれるし、関心も高まる事が期待できる。

もしパーティー券の購入や献金をさりげなく勧められたら?
断ればいいだけ。

税金で日本人の平均所得の数倍が保証されている職業なわけだし、世の中のために尽くしたいということで政治家に立候補されたのだから。皆がコンタクトをとれば喜んでくれるはずだ。こわい人はいなくて、やさしいひとばかりだから(それは私が保証する)、積極的に行こう!

社会学者の宮台真司氏がいうように「政治についてディスカッションする場が必要。議論を通じないと自分の意見に確信が持てない」というように、テレビを通じた茶の間での議論もなくなり、情報の摂取・収集方法は蛸壺化していて、共通前提を共有する事ができない現代社会。
関心を持ってもらう工夫をどう設計するのか。そのためには理解のための仕組みを設計することだろう。非常に難しいが、一歩一歩進んでいくしかない。

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日本公共利益研究所代表・主任研究員

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