東京一極集中はよくないの?

2016年07月16日 14:06

東京都知事選挙に出る増田寛也さん(自民・公明推薦)は、日本創成会議というシンクタンクの座長で、「地方からの人口流出がこのまま続くと、市町村の半分で人口の再生産力を示す若年女性が2040 年までに半減する」という推定を発表し、『地方消滅』という本を出しました。

増田さんは東京一極集中に歯止めをかけるために地方を再開発する「地方元気戦略」などの政策を提案し、これがいま安倍政権の「地方創生」と称するバラマキ財政のもとになっています。また増田さんが総務相のときは、毎年2000億円の都税を地方にばらまく制度もつくりました。

このように「東京一極集中に歯止めをかけよう」とか「国土の均衡ある発展」とかいう政策は、1970年代に田中角栄が言い始めたもので、その後の日本の国土政策の基本です。このためにいろいろな補助金や地方交付税が都市から地方に再分配され、国の歳出の20%以上をしめています。

でもこれっておかしいと思いませんか? 増田さんは「500以上の市町村で人口が1万人を切り、自治体として維持できなくなる」といっていますが、憲法では「居住移転の自由」が認められているので、地方に住んでいる人は都市に引っ越せばいいのです。消滅するのは地方ではなく地方自治体で、困るのは役所と役人だけです。

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上の図は全国の県民所得ですが、東京都民の年収は平均442万円で、沖縄の2倍以上です。東京に生産性の高い企業が集まっているからです。人口が減っても、一人当りの所得が増えれば困りません。困るのは生産性の高い東京の税金を地方にばらまいて、むだづかいすることです。沖縄には毎年3000億円以上の補助金が配られていますが、県民所得は最下位です。

これは会社のケースを考えてもわかるでしょう。会社の業績が悪くなったとき、黒字の部門から赤字の部門にお金を配ると、両方とも赤字になって会社はつぶれます。こういうときは、赤字の部門をつぶして黒字の部門に投資を集中したほうがいいのです。大事なのは人口を増やすことではなく、生産性の高い都市に人口を集中することです。

もう一つの問題は、東京の高齢化です。いま東京都の人口分布のピークは35~39歳ですが、これは25年後には60~65歳になり、高齢者が143万人も増えます。こうした老人福祉のコスト増は、若者の貧困化や都市のスラム化としてあらわれます。

これを避けるには無駄な財政支出を減らして東京を小さな政府にし、安価な賃貸住宅の建設を補助するなどのスラム化対策に公共投資を重点配分する必要があります。オリンピックなんかやっている場合じゃないのです。

「地方消滅」なんか恐れる必要はありません。江戸時代以前は、山間部や豪雪地帯に人は住んでいなかったのです。これから大事なのは人口を大都市に集中させ、効率的なインフラ投資をすることです。専門家は、これからは東京、上海、ムンバイ、リオデジャネイロなど人口1000万人以上のメガシティの競争で経済が決まると予想しています。

今後のグローバル経済は、国よりもこういう都市間の競争になるので、東京都知事の役割はとても大事です。むしろもっと東京一極集中が必要なのです。東京の予算を地方に配る増田さんが知事になると、東京だけでなく日本経済がアジアの中で沈没してしまいます。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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