一流ファンドマネージャーが使う思考術とはなにか?

2016年07月19日 06:10

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写真は塚口直史氏。

ファンドマネージャーの仕事とは、資産家から資金を預かり運用する仕事である。変化の激しい国際金融市場で、常に五手先、十手先を読み、リターンを挙げなくてはいけない。

情報を「お金」に換える シミュレーション思考』(総合法令出版)の著者である、塚口直史(以下、塚口)は、ファンドマネージャーである。その実績は高く評価されている。

2015年、中国経済危機に備えるポジショニングが奏功し、50%以上の投資利回りを実現。世界3位として表彰される(ファンド評価会社バークレイヘッジ社、2015年度グローバルマクロ戦略部門)。また同年、ロシア国内での運用成績でも1位である(ロシアヘッジファンドインダストリー 国際部門)。

本書では、国内外の資産家から巨額の資産を預かり運用する塚口が、1日の大半を費やすという「シミュレーション思考」について紹介されている。リーマン・ショックを含む世界金融危機、ギリシャ・ショックなど、世界が揺れ、ほかの投資家が軒並みマイナスの成績となるなか、驚異的なリターンを挙げる著者の思考法について探索する。

●目先ではなく、その先のストーリーが重要

ファンドマネージャーの顧客は、海外金融機関から国内上場企業のオーナーなど多岐にわたっている。彼らのような資産家は、常に広くアンテナを張り巡らせ、情報感度を高くしている。塚口によれば、一流の資産家ほど、運用利益云々といった目先の数字には興味を示さないそうである。むしろ、「一体なぜこのような投資をおこなうのか」という、運用の背景にあるストーリーを多く入手しようとする。

「実際に、海外投資、特に新興国投資を行う過程では、利益を出すこともあれば損失を出すこともあります。『将来こうなるのでは』と、ストーリーを組み立てて予測し、そこに向けて行動します。ストーリーに自分の時間とお金を投資するのです。そのため、ストーリーに影響を国際情勢などの情報収集に余念がありません。このような行動につながる思考を『シミュレーション思考』と位置づけています。」(塚口)

また、シミュレーション思考には「世界に対する好奇心」、地理と政治を結びつける「地政学」、私たちの経済生活の基盤を知るための「お金の歴史」の3つが重要だとしている。深く地政学の歴史を学び、広くお金の歴史を学び、世界の情報に精通することが必要である。

「城に例えると、お金の歴史で堀ができ、地政学で石垣ができるイメージです。そして、多くの国のお金の歴史と地政学を知れば、本丸、二の丸、三の丸と外郭が増えてより強固になります。」(塚口)

●多様性がある「シミュレーション思考」

塚口は、シミュレーション思考は様々な局面で使用できるとしている。学生がおこなう就活がある。多くの学生は、有名企業や人気企業に殺到するがそれは間違えているかも知れない。将来がどうなるかを考えて、それを前提にして活動をすることが望ましいからである。

「いまの評価が高いという理由で人気上位の会社に就職するべきではありません。それは割高な株を買うことと同じです。それよりも他の人には見えていない価値を見出して、結果的に多くの利益を上げることのほうが大切です。就職活動は、株式投資とまさに同じ行為なのです。」(塚口)

多くの人はこの「他の人には見えていない価値」を探すことを放棄している。誰かが言った価値に基づいて行動している。それは誰かの評価を基準に生きていくことが同じである。いまの姿だけではなく、未来の姿を想像することが必要である。

●いま必要な「シミュレーション思考」

塚口は、私たちに今後求められているのは「自分の足でしっかり立つ」ことだとしている。自分の人生を、複数の自分の評価軸をベースに創り上げていくことが大切である。少子高齢化で体力が弱っている国にこれ以上頼っている場合ではなく、自らが考える力をつけ、考えたことを行動に素早く移す力が不可欠になっていくと。

最後に、本のあとがきの一部を引用し結びとしたい。「私たち一人ひとりの、社会に依存しない生き方が、社会の足を引っ張るのではなく、複数のストーリーを持ち、ストーリーから別のストーリーに乗り換えていく機動力が不可欠になっているのです。逆に活性化させ、ひいては日本という国家を立ち直らせる力の源になっていきます。」

PS

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尾藤克之
コラムニスト

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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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