都知事選候補者の子育て支援政策を比較してみた

駒崎 弘樹

比較

政府有識者会議の委員であり、保育・児童福祉事業者であり、2児の父である駒崎です。

都知事選挙の主要3候補(敬称略)の子育て支援政策を比較してみました。

【増田寛也】 http://www.h-masuda.net/policy.html

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「子育て支援3本柱」ということで、待機児童解消を謳っていますが、具体策は見えません。また、「子育て世代包括支援」と言っていますが、具体的に何なのかは分かりません。「仕事と生活の両立を目指して働き方を改革」と言っていますが、それをどうやるかは分かりません。

また、現在の待機児童問題の遠因は、保育士の低処遇による保育士不足ですが、そこに言及がないのは大変残念です。

一方で、他の候補達とは異なり、子育て支援を公約の先頭に持ってきているのは、評価できます。

分かりやすさを優先してか、全体的にスローガンに過ぎず、例えば政策集のような別ファイルのリンクを作り、「詳しくはこちら」というように見せていくと、玄人達を納得させられたのではないかと思います。

「豊富な行政経験が裏付ける「実務能力」」がアピールポイントなのですから、具体的な部分に突っ込んでもらいたかったです。

【小池百合子】 https://www.yuriko.or.jp/senkyo/kouyaku.pdf

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「「待機児童ゼロ」を目標に保育園受け入れ年齢、広さ制限などの規制を見直す」という規制緩和が前景に出た対策です。

確かに小規模保育では受け入れ年齢は全年齢化した方が良いので、規制緩和をした方が良いですが、子ども一人あたり面積は十分狭いので、ここは規制緩和の必要性は個人的には感じません。

また「保育ママ」「保育オバ」を活用、とありますが、保育ママは家庭的保育という国の制度で存在しているのですが、「保育オバ」というのは意味不明です。おそらくは地域の子育て経験者等、中高年を指しているのだと思いますが、そうした方々は現在はファミリーサポートセンター等においてある程度活躍されているので、もしそうだとしたらあまり目新しさはありません。

「あらゆる都内有休空間を利用」という点は、他の候補が触れていない大切な点です。各種都有地・都立公園はまだまだ活用可能であり、そこにリーダーシップを振るっていくのは可能性があります。

「「残業ゼロ」などライフ・ワーク・バランスの実現を、都庁が先行実施する」とありますが、瑣末なことですが、ライフ・ワーク・バランスじゃなく、ワークライフバランスです。ただ、単にやります、ではなく都庁が率先してやる、という具体策を出してきたのは評価できます。

その他「給付型奨学金を拡充し」というところは良かったのですが、「英語教育を徹底する」というのはよく分からない点です。給付型奨学金というのは、経済的な理由によって進学の機会を失っている子ども達に手を差し伸べていくもので、英語だけに限定する必要はないからです。

また、「子どもの貧困」という課題にも言及して頂きたかったです。

【鳥越俊太郎】 http://www.shuntorigoe.com/pg_tochiji.html

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「保育所の整備をはじめ、あらゆる施策を通じて、待機児童ゼロを目指します」ということですが、抽象的です。「長時間労働の是正など、働き方改革で、ワークライフバランスを進めます」というのも、具体策に欠けます。

ただ、「子どもの貧困」について触れ、「すべての子どもに学びの場が提供できる環境を整えます」「貧困・格差の是正に向けて、若者への投資を増やす」という再配分への姿勢を見せたのは、良いところだと思います。具体策はないですが。

また、大事な「保育士の給与・処遇を改善します」ということを押さえ、他の候補が言っていない「子育て・介護に優先的に予算を配分します」という財源の優先順位を明確化したのは、評価できるでしょう。

一方、全体的に具体策の踏み込みは甘く、スローガンに留まっている印象は拭えません。

以上、3候補を概観してみました。まとめると、どの候補もやはり子育て支援をライフワークにしている人がいるわけではないので、具体性に欠けるか、あるいは知識不足な点があり、胸を張ってお勧めできる候補は、残念ながら存在しませんでした。

とはいえ、こうした政策比較が、都民の皆さんの都知事選びの議論に、何らか貢献できれば嬉しいです。

そして各種専門家の皆さんが、それぞれのフィールドで候補者の比較を行って頂き、多層的な議論ができることを心から願っています。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のFacebook 20167月18日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎氏のFacebookをご覧ください。

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